浅岡陽一 (Yoichi Asaoka) のページ

東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設

論文リスト 重要なリンク 専門分野 研究内容 学生のみなさまへ 自己紹介

1. 論文リスト

research map 参照 (https://researchmap.jp/YoichiAsaoka)

2. 重要なリンク

3. 専門分野

宇宙素粒子物理学実験:宇宙線直接観測、ハイパーカミオカンデ

4. 研究内容

学部4年生で最高エネルギーの加速器で究極の物理に迫る素粒子実験を志し、入った研究室では気球による反粒子の直接観測で「宇宙における素粒子現象」を探求するBESS実験に携わりました。BESS実験は、質量と電荷の同定という確実な方法で宇宙線反陽子の存在を確立し、そのスペクトルを精度よく測定しました。

その後、R&Dプロジェクトを経て、国際宇宙ステーションで高エネルギー宇宙線を直接観測するCALET実験に携わりました。CALET実験は、エネルギーを測定するカロリメータに特化した検出器を用い、宇宙ステーション搭載による長期安定観測と合わせて、頻度の低い高エネルギーでの宇宙線電子、陽子、原子核の直接測定を可能にしました。現在も観測を継続しており、興味深い結果を出し続けています。

実験的に未知を既知に変えていくのはとても難しいことです。正しい結果を得るために、これまでの経験で、「直接的に」測定するということの重要性をひしひしと感じてきました。技術的進歩により宇宙線観測の精度は大きく向上し、銀河宇宙線の理解は格段に進みました。一方で原始ブラックホールの蒸発や暗黒物質の対消滅による「宇宙における素粒子現象」の信号を有意に検出する余地はだんだん小さくなり、バックグラウンドとなる宇宙線そのものの不定性を考えると、大発見がなかなか難しい状況になっていると思います。

素粒子物理学的な発見を目指すには、「素粒子現象」を直接的に測定することが必要と考え、2020年よりハイパーカミオカンデ実験に参加しました。現在は、ハイパーカミオカンデ建設現場を指揮する立場で実験開始を目指しています。ニュートリノビームを生成する加速器の増強と、スーパーカミオカンデの後継となるハイパーカミオカンデ検出器の建設を組み合わせたハイパーカミオカンデ計画は、素粒子の物理に織り込まれた定数を、最も直接的に測定する絶好の機会です。

ハイパーカミオカンデで測定するニュートリノと反ニュートリノの対称性が最大限に近く破れているとすると、そのことは、現在宇宙を観測している我々が存在するための必要条件として、重要な役割を担ったことを意味しているのではないか、と想像しています。ハイパーカミオカンデによる発見と、それに続く素粒子物理の展開にワクワクしています。

5. 学生のみなさまへ

全ての自然科学が立脚する科学的方法論は、未知を探求するための方法論です。同じ実験を行えば同じ結果がでるという再現性に立脚し、仮説と検証のスパイラルにより新たなる発見を積み重ね真理に漸近します。中でも統計学による「帰納」と物理の予言による「演繹」を組み合わせた実験物理学は、自然科学のエッセンスと言えます。「反例」がブレークスルーの鍵になるのは、理論の信頼性の裏返しと言えます。

物理の研究は「何の役に立つんですか」と聞かれることがよくありますが、最も洗練された方法論を実践の中で学べる神岡での大学院生活は、みなさんの今後の人生にかけがえのない経験を与えてくれると思います。

宇宙の研究では、外国の僻地や高山が観測サイトとなることがとても多いです。飛行機等での10時間単位の移動に加え、拠点となる街からも1時間はかかるのが普通です。そんな中、神岡の地下施設では、世界をリードする研究が、東京から3時間ちょいの場所で行われているのです。最寄りの神岡町からは15分で地下サイトに着きます。実はものすごくアクセスがいいんです。一緒にハイパーカミオカンデの建設を完了し、初めての成果をつかみましょう。

6. 自己紹介(準備中)