【論文紹介】二重電子捕獲の探索 2019年3月7日

二重電子捕獲とは、たとえばキセノン-124原子核が、

124Xe + 2e- -> 124Te + 2νe

のように、軌道上の2個の電子を同時に捕獲してテルル-124と2個のニュートリノに変化するような原子核の崩壊過程の一つです。この過程の半減期は1020~1024年と非常に長いことが予想されていて、これまで実験的に観測されていません。このような崩壊過程を観測することで、原子核反応を計算する理論モデルの検証につながります。また、もしニュートリノ放出しない崩壊過程が観測された場合には、現在の素粒子物理学の標準模型を超えた新しい発見につながると期待されています。

今回XMASS実験では800日分の観測データを用いて、2個のニュートリノ放出を伴う通常の二重電子捕獲の探索を行いました。液体キセノンを用いたXMASS-I検出器の中には、キセノン-124が0.095%、キセノン-126が0.089%含まれています。XMASS-I検出器の中で二重電子捕獲が起きると、図1のように主に2個の特性X線が発生して全部で63.6 keVのエネルギーが観測されるはずです。

図1:キセノンの二重電子捕獲の模式図。2個の軌道電子がキセノン原子核に捕獲されたあと、2個の特性X線または複数のオージェ電子(特定のエネルギーを持ったX線または電子)が発生する。

XMASS-I検出器で観測されたエネルギースペクトルを図2に示します。実際に観測されたデータと、観測データをもとに予想されたノイズ事象および二重電子捕獲による事象の分布を比較しています。統計誤差および系統誤差を考慮した結果、二重電子捕獲の有意な信号は観測されませんでした。

図2:XMASS-I検出器で観測されたエネルギースペクトル。黒点がデータ、色付きのヒストグラムが予想される二重電子捕獲(赤)およびその他のノイズ事象の分布を表している。統計誤差および系統誤差を考慮すると、有意な信号は観測されなかった。

以上の結果から、キセノン-124およびキセノン-126の半減期に対して、

T1/2(124Xe) > 2.1 x 1022

T1/2(126Xe) > 1.9 x 1022

という下限値をつけました。図3は、キセノン-124の半減期の理論予想とこれまでの実験的制限の比較を表しています。XMASS実験では、2016年に132日分の観測データを用いた探索を世界最高感度で行っていましたが、今回の我々の結果はさらに4倍以上の感度向上を達成し、依然として世界で最も厳しい実験的制限となっています。

図3:キセノン-124の半減期の理論予想とこれまでの実験的制限の比較。青い四角で示された領域が様々な理論で予想されている半減期の範囲を示していて、水平に書かれた線より下側がそれぞれの実験で排除されている。今回の我々の結果により、赤く塗りつぶされた領域が排除されたことになる。