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計画研究C01:ニュートリノ振動現象の研究

研究組織

代表 南方 久和 東京都立大学大学院理学研究科 教授 素粒子物理学理論
  川崎 雅裕 東京大学宇宙線研究所 助教授 宇宙物理学
  小出 義夫 静岡県立大学経営情報学部 教授 素粒子物理学理論
  末松 大二郎 金沢大学大学院自然科学研究科 助教授 素粒子物理学理論
  高杉 英一  大阪大学大学院理学研究科 教授 素粒子物理学理論
  谷本 盛光 愛媛大学教育学部 教授 素粒子物理学理論
  中川 昌美 名城大学理工学部 教授 素粒子物理学理論
  波場 直之 三重大学工学部 助手 素粒子物理学理論
  福山 武志 立命館大学理工学部 教授 素粒子物理学理論
  牧  二郎 近畿大学理工学部 教授 素粒子物理学理論
  松田 正久 愛知教育大学教育学部物理宇宙領域 教授 素粒子物理学理論
  緑川 章一 青森大学工学部 助教授 素粒子物理学理論
  安田  修 東京都立大学大学院理学研究科 助手 素粒子物理学理論
以上 13名




研究の概要



(1)3世代レプトンフレーバー混合行列の全体構造の解明

素粒子の標準模型とそれに基づく最新の実験事実の理解によれば、基本粒 子の存在形態は理論的整合性をもつゲージ理論を作りうるレプトンとクォー クの組(世代)が繰り返し現れる三世代構造をもっている。現在この三世 代レプトンフレーバー混合の構造は、ニュートリノ振動現象を通じてのみ 我々の前に姿を現している。この証拠が捕えられた大気ニュートリノ実験 の他にも、この現象の存在を強く示唆している太陽ニュートリノ実験やこ の性質に厳しい制約を課している原子炉・加速器実験が存在する。これら の諸実験の詳細な分析を通じて、三世代レプトンフレーバー混合の構造を あきらかにすることが焦眉の課題である。

大気ニュートリノ振動において、ミュー・ニュートリノがタウ・ニュート リノに行くチャネルが支配的であることはすでにスーパーカミオカンデで明ら かにされているが、電子ニュートリノに行く確率がどの程度まで混じって いるのかを決定できていない。この実行を阻んでいる最も大きな要因は、 大気ニュートリノの絶対強度が高い信頼度で求められていない という事実にある。この情報は電子ニュートリノの混じり具合、言い換え れば電子型ニュートリノと第3質量固有状態との行列要素の決定にとって 重要な役割を果たす。この行列要素の大きさの決定は、混合行列の三世代 性が二世代混合の組合わせによる見かけだけのものか、それとも真性の三 世代性が自然に存在するのか、を見極める重要な作業である。

本特定領域の計画研究A01によって一次宇宙線絶対強度の測定が未曾有の 高精度で、しかも0.2 GeVから500 GeVという広いエネルギー範囲にわたって 行なわれる。この情報を使って、大気ニュートリノフラックスの 絶対強度を高い精度で求め、大気ニュートリノによる電子、ミュー粒子、 貫通していく上向きミュー粒子事象などの解析を統一的に行い、上記行列要素の 精度よい決定を行う。

本特定領域の計画研究B01によって、最新の日震学の観測データに基づく 太陽模型によって太陽ニュートリノフラックスが高い信頼度で計算される。 この情報を基に、スーパーカミオカンデやその他の太陽ニュートリノ実験の結 果の精密な解析を行い、電子型ニュートリノと第2質量固有状態との行列 要素の精度よい決定を行う。さらに、この特定領域研究の進行と時を同じ くして進行する国内外の諸実験の成果を時々刻々と取り込み、大気・太陽 をはじめとする様々の天体・宇宙起源のニュートリノ観測結果や原子炉・ 加速器実験のデータを総合的に分析し、3世代レプトンフレーバー混合行 列(国際会議ニュートリノ'98 におけるP. Ramond の提案にしたがって、牧・ 中川・坂田行列と呼ばれる)の全体構造の解明を目指す。



(2)異なったタイプのニュートリノの可能性

ニュートリノ振動現象はニュートリノ質量の存在を意味するが、ニュート リノ質量に対しては、大きく分けて次のような二つの異なった考え方があ る。一つは柳田のシーソー機構で予言されているように、ニュートリノを マヨラナ型質量をもった粒子として捉えるという考え方であり、他の一つ は不活性右巻ニュートリノを伴うディラック型質量をもった粒子であると いう考え方である。(マヨラナ粒子とは粒子反粒子の区別がないフェルミ 粒子を言う。)このような考察から自然にその存在が期待される不活性 ニュートリノが 通常の活性ニュートリノと同程度の微小な質量をもつとすると、ニュート リノ振動がこの不活性ニュートリノとの間に起きているという可能性が生 まれる。

実際、現存の実験事実を理解するために三世代スキームを越えた様々の 理論的可能性が提案されている。例えば、ロスアラモス研究所の加速器実 験によって観測されたニュートリノ振動イベントはこのスキームの拡張を 我々に迫っている。この最も広く議論されている候補は上述の軽い不活性 右巻ニュートリノである。このような不活性ニュートリノへの振動が起き ているか否かを明らかにすることは、レプトンフレーバー混合の起源を理 解する上で欠くことのできないステップである。 実験事実の精密な分 析を行うことによって、不活性ニュートリノへの振動の存否を明らかにす る。

超新星からのニュートリノの観測はスーパーカミオカンデの主要目的の一つで ある。銀河内超新星からのニュートリノはスーパーカミオカンデに数千個の 事象を生じると予想されている。この高統計事象の解析は II 型(重力陥没 型)超新星爆発機構を我々に明らかにしてくれるものと期待されている一 方、弾性散乱、吸収反応、原子核との衝突などの各種事象の詳細な解析に よって、超新星ニュートリノのフレーバー組成の測定手段としても有力視 されている。この量はニュートリノフレーバー混合のシナリオによって多 様に変化し、これらの実験的選別に有効である。様々なニュートリノ混合 スキームに依存した超新星ニュートリノに対する観測的予言を詳細に明ら かにする。

さらに、質量をもったニュートリノは宇宙の暗黒物質としての役割を担っ ている可能性がある。この要請は三世代ニュートリノの枠組みの中では、 ほとんど縮退した質量スペクトルをもつという強い制約下でのみ実現可能 であることが知られており、マヨラナニュートリノの場合にはこの制約を 二重ベータ崩壊実験で検証しうる。上記の超新星からのニュートリノの観 測などによる制限を考慮し、ディラックニュートリノの可能性を含めた再 検討を行う。

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平成11年7月15日

revised on 1999/11/18 webmaster@suketto.icrr.u-tokyo.ac.jp