ごあいさつ
スーパーカミオカンデへようこそ!
スーパーカミオカンデ(SK)の研究対象の一つである「ニュートリノ」は、電子やクォークと同じく身近な素粒子の一種ですが、電荷を持たず、物質とほとんど反応しない非常に特殊な粒子です。このニュートリノを観測するためには、大量の物質が必要となります。そのため、SKでは約5万m3もの純水を用いて観測を行っています。
ニュートリノは長い間、質量を持たない粒子であると考えられていました。しかし、SKで発見された「ニュートリノ振動」(ニュートリノが異なる種類に変化する現象)によって、ニュートリノに質量があることが明らかになりました。この発見は、「素粒子標準理論」が完全な理論ではないことを示す重要な実験事実であり、未知の素粒子理論への扉を開くものでした。
また、ニュートリノは物質とほとんど反応しないという特性を活かし、星の内部や宇宙の遠方を観測する手段としても利用されています。例えば、SKでは、核融合が活発に行われている太陽の中心部で生成されるニュートリノや、大質量星が中心核を崩壊させる際に発生する超新星爆発ニュートリノを観測することができます。一方で、宇宙誕生以降の超新星爆発によって蓄積された「超新星背景ニュートリノ」は、現在も地球周辺に存在していると考えられていますが、未だ観測には至っていません。このニュートリノを捉えることができれば、星の形成過程や、私たちの体や身の回りを構成する元素の起源を解明し、宇宙の歴史を紐解くことが期待されます。
SKは2020年8月から、純水にレアアースの一種であるガドリニウムを添加した新しい実験「SK-Gd」として観測を開始しました。この改良により、観測感度が飛躍的に向上し、世界で初めて超新星背景ニュートリノの検出が実現することが期待されています。
さらに、SKの究極の研究目標として、「陽子の崩壊」を世界最高感度で探索し続けています。標準理論では陽子が崩壊することはないとされていますが、もし陽子崩壊が発見されれば、すべての素粒子が一つの理論に統合される「大統一理論」の検証につながる可能性があります。
このように、SKは観測開始から四半世紀以上を経た現在も、世界最先端の研究施設であり続けています。今後も一線級の研究成果を生み出すために全力を尽くしてまいりますので、引き続きご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
関谷 洋之
スーパーカミオカンデについて