1980年代
初代カミオカンデの運転がスタート。その4年後に、16万光年先から超新星爆発ニュートリノが飛来します。ニュートリノが飛んできた時間はわずか10秒。装置の改造が数ヶ月、メンテナンスのタイミングが数分遅れていれば、この結果はありませんでした。
1983.7
カミオカンデ運転開始
陽子崩壊の探索によって、素粒子物理学の大統一理論を検証することを目的として、カミオカンデ実験がスタート。東京大学宇宙線研究所神岡地下観測所(現・神岡宇宙素粒子研究施設)は、カミオカンデ実験を推進するため1983年に設立されました。岐阜県神岡町の神岡鉱山の地下1000mに、直径16m、高さ16mの円筒形の水槽に体積3000トンの純水を満たした検出器が設置されました。カミオカンデは、「神岡核子崩壊実験(KAMIOKA Nucleon Decay Experiment)」の頭文字から名付けられました。
1986.12
カミオカンデは太陽ニュートリノの観測のため装置を改造。改造を終え観測を再開したのは1986年の暮れ頃のことです。
1987.2
超新星爆発ニュートリノの観測に成功
その後、改良作業の結果感度が飛躍的に上がった装置は、大マゼラン星雲で起こった超新星爆発からのニュートリノを観測することに成功、大きな成果を上げました。また1988年には太陽からのニュートリノを観測し、世界の研究者から高い評価を得ています。
1990年代
2代目の実験装置スーパーカミオカンデの運転がスタート。これまで質量がゼロと考えられていたニュートリノの常識を越えるニュートリノ振動の証拠を発見。ノーベル物理学賞受賞につながる2度目の大発見となりました。さらに、世界初の人工ニュートリノを用いたK2K実験でその発見を確認しました。
1991.12
スーパーカミオカンデ検出器建設のための空洞掘削を開始。飛騨片麻岩の硬い岩盤を掘り進めていきました。
1994.6
空洞掘削完了、検出器の建設開始。巨大空洞の壁面にステンレス板を取り付け、モジュール化された光電子増倍管を内壁に取り付けていきました。
1996.1
検出器へ給水開始。2ヶ月かけて体積5万トンのタンクを満たします。
1996.4
スーパーカミオカンデ運転開始
1996年4月1日0時に多くの研究者が坑内で見守る中、スーパーカミオカンデの運転が開始されました。運転開始のボタンを押したのは、初代実験代表者である戸塚洋二教授でした。
1998.6
ニュートリノ振動の発見
地球の反対側から飛来するミューニュートリノの数が少ないことを示し、ニュートリノ振動の確たる証拠を世界に発信しました。
1999.1
スーパーカミオカンデ観測グループ(代表者:戸塚洋二)として朝日賞受賞 「ニュートリノに質量があることの発見」。
1999.6
K2K実験開始
世界初の長基線ニュートリノ実験K2Kがスタート。茨城県つくば市にあるKEK(高エネルギー加速器研究機構)の加速器で人工的に作られたニュートリノを約250km離れたスーパーカミオカンデに打ち込むというこの実験によって、大気ニュートリノで発見されたニュートリノ振動を確認することに成功しました。
2000年代
30年にわたる太陽ニュートリノ問題が解決。およそ半数の光電子増倍管が割れてしまう事故がありましたが、なんとか再建。小柴先生がノーベル物理学賞の栄誉に輝くうれしいニュースもありました。また、K2K実験をさらに精密化したT2K実験を開始しました。
2001.6
2001.11
光電子増倍管破損事故
2001年7月、不具合のある光電子増倍管が増えてきたため、排水のうえ交換作業が行われました。2001年11月、交換後の注水の最中、底面の光電子増倍管が割れてしまう事故が発生。光電子増倍管の中は真空のため大きな衝撃波が生じ、水を伝って他の光電子増倍管を連鎖的に破損。内水槽の半分以上の光電子増倍管6777本と、外水槽の光電子増倍管1100本が壊れました。失意に暮れる研究者たちでしたが、戸塚施設長(当時)の「再建するぞ!」の号令のもと、事故再発防止のための実験に取り組んでいきました。
2002.10
部分再建
破損を免れた5182本の内水槽光電子増倍管をひとつ置きに配置し直し、FRPとアクリルから成る衝撃波防止ケースを取り付けることにより再建を果たし、2002年10月に観測を再開しました。
2002.12
小柴昌俊先生ノーベル物理学賞受賞
1987年の超新星爆発からのニュートリノの観測成功、1989年の太陽からのニュートリノの観測成功などによって「ニュートリノ天文学」が創始された成果が認められ、小柴昌俊先生がノーベル物理学賞を受賞されました。
2004.6
K2K実験、スーパーカミオカンデで発見された大気ニュートリノ振動を確認。
2004.7
大気ニュートリノ中の振動パターンの直接観測。
2004.11
K2K実験終了
2006.6
完全再建
光電子増倍管のガラスは、職人により一つ一つ手作りしています。2002年の部分再建後観測を続けながら、光電子増倍管を元の本数に戻す準備は着々と行われていました。2005年10月から2006年6月にかけて再度タンクを開け、完全再建作業を行いました。これにより、内水槽の光電子増倍管の本数は、事故前とほぼ同じ1万1129本となりました。
2008.9
データ収集システムの一新
2009.4
T2K実験開始
K2K実験の約50倍の強度のニュートリノビームを用いたT2K実験が開始し、ニュートリノ振動に関するより精密な研究が始まりました。
2009.11
スーパーカミオカンデで観測された陽子崩壊の寿命が1034年を超えました。
2010年代
3種類のニュートリノ振動がすべて実験的に確認されました。T2K実験で、ニュートリノに「CP対称性の破れ」が存在する可能性が高いことがわかってきました。なぜ反物質と対消滅することなく、この宇宙に私たちをはじめとする物質が存在するのか?その解明に少しずつ近づいています。
2011.6
2013.7
T2K実験で電子ニュートリノ出現事象の観測と測定。
2015.11
鈴木洋一郎特任教授、梶田隆章教授、およびスーパーカミオカンデ共同実験グループと、西川公一郎先生とK2K/T2K共同実験グループが「基礎物理学ブレークスルー賞」を受賞。
2015.12
2016.7
T2K実験 ニュートリノの「CP対称性の破れ」について最初の結果を発表。
2017.8
T2K実験 ニュートリノの「CP対称性の破れ」、可能性さらに高まる。
2018.6
2019.1
改修作業を終え、実験再開
2020年代〜
1987年にカミオカンデで観測されて以降、超新星爆発時のニュートリノは観測されていません。そこで、宇宙誕生から現在までの超新星爆発による「超新星背景ニュートリノ」をとらえるためにSK-Gdをスタート。ハイパーカミオカンデも着工し、ニュートリノ研究のさらなる発展を推進していきます。
2020.2
ハイパーカミオカンデ計画が正式にスタート
3代目の実験装置「ハイパーカミオカンデ」が着工。スーパーカミオカンデよりも効率的に膨大なデータを得られる設計となっており、新たな発見が期待されています。
2020.8
SK-Gd開始
ガドリニウムを加え、新生スーパーカミオカンデがスタート。これにより、ニュートリノの観測感度の向上、特に、「超新星背景ニュートリノ」の世界初の観測が期待されます。超新星爆発の理解が進み、さらに宇宙での元素合成の理解へとつながります。
2021.5