検出器について

検出方法

スーパーカミオカンデ実験は、約1万3000本の光電子増倍管(内水槽1万1129本、外水槽1885本)が取り付けられた巨大な水のタンクを用いて、主にニュートリノなどの観測研究を行っています。

(左図)スーパーカミオカンデにニュートリノが入ってくると、ごくまれにリング状のチェレンコフ光が観測される。

5万トンの水が標的

スーパーカミオカンデ実験の目的の一つは、太陽ニュートリノ、大気ニュートリノ、人工ニュートリノなどの観測を通じて、ニュートリノの性質の全容を解明することです。1998年には、大気ニュートリノの観測により、ニュートリノが飛行する間にその種類が変化する現象(ニュートリノ振動)を発見し、さらに2001年には、太陽ニュートリノの観測により、太陽ニュートリノ振動を発見しました。2011年には人工ニュートリノによって第3の振動モードも発見しました。ニュートリノの性質を解明することは、宇宙の初期に物質がどのように作られたかという謎に迫ることにつながります。

1万3000の目でチェレンコフ光を見る

ニュートリノがたたき出した荷電粒子が、水中の光の速度よりも速く水中を走ると、チェレンコフ光が放出されます。この現象は、水面を進むアヒルが、水面波の速度よりも速く進んだときに斜めの波が出る現象に似ています。

放出されたチェレンコフ光は、荷電粒子の進む方向に対して円錐形に放出されます。水タンクの壁に取り付けられた光電子増倍管は、このチェレンコフ光をキャッチします。光電子増倍管からは、受けた光の量と光を受けた時間についての情報が得られます。それらを元に、荷電粒子のエネルギー、進行方向、位置、粒子の種類を決定します。

ニュートリノがたたき出した荷電粒子が走ることによってチェレンコフ光が発生します。

左の図は、スーパーカミオカンデでとらえたミューオンニュートリノイベントのディスプレイです。色のついた点は光電子増倍管が受けた光の量の大きさを表しています。ミューオンが放出したチェレンコフ光が壁にリング状に投影されています。

なぜ地下1000mで実験するのか

地球には絶えず、宇宙から主に陽子からなる(一次)宇宙線が降り注いでいます。宇宙線が地球上の大気と衝突すると、ミューオン、電子やニュートリノなどの粒子が生成され、これらを二次宇宙線と呼びます。地中にもぐると、多くのミューオンは土の中でエネルギーを失って止まります。一方、ニュートリノは物質とほとんど反応しないので、土の中でも止まらずに突きぬけます。

このようにして、検出器の上にかぶさっている山が、雨を避ける傘のような役割を果たし、ニュートリノ観測に邪魔な宇宙線ミューオンをさえぎっているのです。地下1000mの深さにもぐることによって、宇宙線ミューオンは地表の約10万分の1にまで減少します。

イベントディスプレイ

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イベントディスプレイの見方

イベントディスプレイでは、光電子増倍管がとらえた光の情報を表示することにより、スーパーカミオカンデで検出しているデータを見ることができます。このディスプレイを通して、検出された粒子の種類や方向などを大まかに判断できます。

円筒形のスーパーカミオカンデ検出器をひらいた展開図になっています。このディスプレイのメインは直径50cmの光電子増倍管を、1万1129本設置してある検出器内側の水槽の展開図です。小さな色のついた点は、光をとらえた光電子増倍管をあらわし、点の色はとらえた光の強さ(光量)を示しています。赤いほど強い光を受けたことを示します。点の色は、いつ光をとらえたかという時間情報を表示させることもできます。この場合は、赤いほど早い(前の)時間を示しています。ディスプレイの右上には、このときの検出器の外側の光電子増倍管の情報が示されています。

宇宙線ミューオンイベント

宇宙線ミューオンは、主に陽子からなる宇宙線が地球上の大気と衝突することで生成され、地上までやってきます。水中でチェレンコフ光を出すので、ニュートリノ検出においては邪魔になります。ただし土の中で止まるので、地下1000mにもぐることで、宇宙線ミューオンを地表の10万分の1にまで減少させることができます。

それでもエネルギーの高いものは、スーパーカミオカンデ検出器にまで到達し、1秒間に約2回の宇宙線ミューオンが検出されます。ここではこれまでにあった特徴的なミューオンイベントをお見せします。

ななめ方向に入って検出器内で止まった

検出器の端をかすっている

2つ同時に検出されている(色は時間を表示)

ひとつ前と同じイベント(色は光量を表示)

3つ同時に検出されている(時間表示)

上から入って検出器内部で止まった(光量表示)

ひとつ前と同じイベント(時間表示)

ミューオンが崩壊して放出される電子も検出できます。

ニュートリノイベント

ニュートリノイベントと宇宙線ミューオンイベントの違いは、大まかには外水槽の光電子増倍管が光を受けるかどうかで区別することができます。荷電粒子である宇宙線ミューオンは、電気を持った荷電粒子なので、スーパーカミオカンデの外水槽に飛び込んでくるとすぐにチェレンコフ光を出すため、外向きに設置された外水槽の光電子増倍管が光を感知します。宇宙線ミューオンはさらに水中を走ってチェレンコフ光を出し続けるため、内水槽の光電子増倍管でも光を感知します。

一方、ニュートリノは電気を持っていないので、水槽に入ってもすぐにチェレンコフ光を出しません。水中の荷電粒子をはじき飛ばして(あるいは相互作用して)、荷電粒子が走ることによってチェレンコフ光を出します。したがって、ニュートリノイベントの場合には、外水槽の光電子増倍管は光を感知せず、内水槽の光電子増倍管だけ光を受けることが多いのです。このように、外水槽の光電子増倍管は、ニュートリノか、宇宙線ミューオンなどの荷電粒子かの大まかな区別をするのに非常に有効です。

ミューオンニュートリノによるイベント。チェレンコフリングがはっきりと見える。ミューオンニュートリノは水中の陽子などと反応してミューオンに変化する。実際に検出するのは、そのミューオンが放出したチェレンコフ光である。右上の外水槽の光電子増倍管はほとんど光を受けていない。

電子ニュートリノによるイベント。電子ニュートリノは水中の電子をたたき出す。電子は水中で電磁シャワーを発生するため、チェレンコフリングがぼやける。

リアルタイムモニター

スーパーカミオカンデで観測している今現在のデータの様子をあらわしたものです。

円筒形の検出器をひらいた展開図になっています。右上の小さい図は外側の水槽の展開図、大きい図が内側の水槽の展開図です。小さな色のついた点は、光をとらえた光電子増倍管をあらわし、点の色はとらえた光の強さを示しています。赤いほど強い光を受けたことを示します。

リアルタイムモニター

スーパーカミオカンデで観測されるニュートリノは、1日に約30個程度です。このモニターでリアルタイムにニュートリノを見つけるのは、確率的にとても難しいかもしれません。ほとんどが宇宙線ミューオンイベントです。さまざまな光のパターンを見て、粒子がどこから入ってきてどの方向に出て行ったのか、想像してみてください。

下記の施設では、スーパーカミオカンデの展示が行われており、リアルタイムモニターも設置されています。

リアルタイムモニター

イベントディスプレイを作ってみよう!

スーパーカミオカンデのシミュレーションデータを元に、あなた独自のイベントディスプレイを作ってみませんか?

CSV形式で、スーパーカミオカンデの大気ニュートリノや陽子崩壊のシミュレーションデータを公開します。光をとらえた光電子増倍管の位置のxyz座標と、それぞれの光電子増倍管が受けた光の量と時間のデータが含まれています。

光の量を好きな色で分けて表示したり、光を受けた時間で色分けしたり、あるいは時間情報を使ってアニメーションにすれば、チェレンコフ光がやってくる様子が見やすいかもしれません。

サンプルデータ ダウンロード (CSV)

Pythonで描いた図の例

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