MINUTE GUIDE -5分でわかるスーパーカミオカンデ-

宇宙や物質の謎を、
ニュートリノ観測で解き明かす。

スーパーカミオカンデは、主にニュートリノという素粒子を観測している巨大な装置です。
このスーパーカミオカンデでニュートリノ振動を発見したことで、2015年に梶田隆章先生が
ノーベル賞を受賞されました。また、前身のカミオカンデでも、2002年に小柴昌俊先生が
同賞を受賞。ニュートリノ研究において、世界をリードし続けています。

WHAT?

そもそもニュートリノって?

ニュートリノはどこにあるの?

今この瞬間にも
私たちの体を通り抜けています。

ニュートリノは一つひとつは小さいですが、粒子の数としては宇宙で光の次に最も多く、太陽や星からたくさん地球に降り注ぎます。また、宇宙から降り注ぐ放射線(宇宙線)に地球上の大気がぶつかることによってもニュートリノは生じます(あとはバナナなどのカリウムを含む食品からも!)。ニュートリノはあまりにも小さく、電気や磁力(電磁気力)にも反応しないので、地球さえもやすやすと通り抜けてしまいます。ですので降り注ぐだけでなく、地球の裏側から私たちの足元、そして空へと通り抜けていくものもあります。太陽から来るニュートリノは、1秒間に数百兆個も私たちの体を通り抜けています。

超新星爆発の様子(右:爆発前、左:爆発後)。16万光年も離れた超新星爆発で放出されたニュートリノが、実際に地球まで届いた。

(アングロ・オーストラリア天文台/Daved Malin撮影)

ニュートリノについて
かんたんに教えて?

物質の最小単位「素粒子」の中でも、
特にとらえにくい「幽霊粒子」です。

ニュートリノは、原子よりもさらに小さい「素粒子」のひとつです。2021年現在、素粒子は電子やクォーク(アップ、ダウンなど)をはじめ、17種類発見されていますが、ニュートリノはそのなかでも特に質量が小さく、電荷をもたないという特徴をもっています。また、まだまだ謎の多い素粒子でもあります。

ニュートリノって何?

HOW?

どうやって観測するの?

そもそも
原子よりも小さい素粒子たちを
どうやって観測するの?

電気をもった粒子なら、
その飛跡を確認することができます。

原子であれば電子顕微鏡で見ることができますが、もっともっと小さい素粒子になると、基本的にその姿を直接見ることは困難です。そこで、一般的には電気をもった粒子(荷電粒子)が飛来したときに生じる放射線や他の物質との相互作用を観察することになります。しかし、ニュートリノは電気的に中性のため、さらに観測が難しくなります。これもニュートリノが「幽霊粒子」と呼ばれる理由のひとつです。

電気をもたないニュートリノは、
どうやって観測すればいいの?

ニュートリノがごくごくまれに物質と
ぶつかって生じる
「光」を観測
します。

ニュートリノの観測は難しくても、ニュートリノに反応した荷電粒子であれば観測することができます。なんでも通り抜けるニュートリノですが、ごくごくまれに通り道にある物質に衝突して荷電粒子をたたき出すことがあります。スーパーカミオカンデでは、検出器の中の水とぶつかって荷電粒子が飛び出したときに現れるリング状の弱い光「チェレンコフ光」を観測しています。

スーパーカミオカンデのモニターをリアルタイムで見てみよう!

スーパーカミオカンデの現在の観測の様子を、インターネット上で見ることができます。
ニュートリノが観測されるのは、1日に約30個。
ほとんどは宇宙線ミューオンによる反応です(1秒に約2回)。
運が良ければ、ニュートリノの反応を見られるかも?

WHERE?

スーパーカミオカンデは
どこにあるの?

スーパーカミオカンデは
どこにあるの?

岐阜県飛騨市神岡町の山の
地下1000mにあります。

地下1000mにある直径約39m、高さ約41mの巨大な水タンク(10階建てビルぐらいの高さです)。それが、スーパーカミオカンデです。なぜ地中にあるのかというと、他の素粒子の影響をできるだけ避けるためです。地球の大気と宇宙線がぶつかったとき、ミューオン(宇宙線ミューオン)、電子、ニュートリノなどの素粒子が生まれます。ほとんどの宇宙線ミューオンは土の中でエネルギーを失って止まりますが、ニュートリノはなんでも通り抜けるため、宇宙線ミューオンの影響が少ない地中で実験を行っているのです。

スーパーカミオカンデの壁に
たくさんある球体は何?

月面の懐中電灯の光さえ見つけるくらい
感度の高いセンサーです。

スーパーカミオカンデのタンクには、ニュートリノが水中の核子(原子核の陽子や中性子)や電子と衝突する回数を増やすため、5万トンもの水が入っています。実際に衝突した際に生じるチェレンコフ光と呼ばれる弱い光を観測するのが、壁一面に設置された光電子増倍管と呼ばれる高感度のセンサーです。その直径は50cmで世界最大。電球のような形に見えますが、これ自体が光を出すのではなくて、光を見る「目」の役割です。月面で光らせた懐中電灯も地球上から観測できるほどの感度を誇ります。

検出器について

WHY?

なぜ研究しているの?

わかるかもしれないこと

宇宙成り立ち
物質存在する理由

現在の宇宙には、物質があふれています。でも実は、物質と出会うと対消滅する「反物質」が、初期の宇宙には物質と同じくらいあったと考えられています。もしかしたら星も私たちも存在しない宇宙になった可能性だって考えられるのです。なぜ物質ばかりが生き残ったのか?ニュートリノと反ニュートリノの違いや性質を詳しく調べることで、宇宙の進化や物質の謎の解明が期待されています。

素粒子正体

現在、素粒子はニュートリノを含めて17種類確認されていますが、「これらは見え方が異なるだけで同じ素粒子なのではないか」という仮説があります。この仮説を実証するのが、原子核を構成する粒子である「陽子」の崩壊です。実はカミオカンデは、もともと陽子崩壊を探索するために計画された実験なのですが、いまだ観測されていません。まだまだ謎が多い素粒子の仕組みを明らかにすることも、スーパーカミオカンデの重要なテーマです。

見えるかもしれないこと

星の内部
宇宙全体

ニュートリノは星の内部や宇宙全体を「見る」ことにも利用できます。たとえば太陽の内部の活動や、超新星爆発の過程なども、そこからやってくるニュートリノを調べればさまざまなことがわかります。スーパーカミオカンデでは、宇宙の始まりから起きてきた超新星爆発のニュートリノをとらえ、宇宙の歴史を探るプロジェクトも行っています。

ニュートリノで見た太陽。

(1996年から2018年のスーパーカミオカンデの観測データをもとに作成)

NEXT?

ハイパーカミオカンデ計画

そして今、2027年の観測開始を目指して建設が進んでいるのが「ハイパーカミオカンデ」です。
さらに大きさと性能を増したハイパーカミオカンデでは、
スーパーカミオカンデ検出器の100年分のデータを約10年で取得可能。
これからも世界のニュートリノ研究をリードしていきます。

ハイパーカミオカンデ