超対称性大統一理論が予言する陽子崩壊探索の最新結果を論文に発表
ニュース
スーパーカミオカンデにおいて、超対称性大統一理論が予言する陽子崩壊の探索結果を更新しました。
この世界の物質は様々な原子から構成され、それらの原子核は陽子と中性子からできています。素粒子の世界では、重い粒子はより軽い粒子へと壊れるのですが、世界を形作る陽子もいつかは壊れるのでしょうか?ヒッグス粒子が発見されて完成した「標準模型」の向こうにある大統一理論は、その問いかけに 「Yes!」と答えています。
大統一理論には様々なモデルがありますが、もっとも簡単なモデルでは陽子が陽電子と中性π粒子に壊れることを予言しています。しかし、世界最高感度の陽子崩壊実験であるスーパーカミオカンデでは未だに観測されず、この崩壊モードにおいては陽子の寿命が1034年以上とわかり、もっとも簡単な統一理論は否定されました。(関連記事はこちら)
一方、超対称性を含めた統一理論では、陽電子と中性π粒子に壊れる崩壊モードが抑制され、代わりに陽子が荷電K粒子とニュートリノに崩壊することが予言されています。このたびスーパーカミオカンデ実験グループは、この陽子崩壊現象をおよそ12年分のデータを用いて探索した結果をフィジカルレビュー誌に発表しました。ヨーロッパの大型加速器LHCで超対称性粒子の探索が盛んに行われている現在、超対称性仮説の検証の観点からも今回の結果は注目されています。
陽子が荷電K粒子とニュートリノに崩壊すると、荷電K粒子はチェレンコフ光を出すのに十分な運動量を得ることができないという点が解析を難しくしています。このため、陽子が崩壊してできた荷電K粒子がさらに崩壊してできた粒子(ミュー粒子、π粒子など)を捕えることにより、陽子崩壊を探索します。一つの粒子を長期間観察するのと、たくさんの粒子を短時間観察するのは等価です。スーパーカミオカンデは水の中にある7×1033個の陽子を長期間にわたって観測を続けました。しかし陽子が荷電K粒子とニュートリノに崩壊した信号を見つけることができず、少なくともこの崩壊モードで陽子の寿命は5.9×1033年以上であることがわかり、様々な超対称性大統一理論に制限をつけることになりました。
今後もさらに観測データを増やし、陽子崩壊の発見を目指していきます。また、次世代実験構想である「ハイパーカミオカンデ」の実現により、陽子崩壊に対する感度が飛躍的に向上することが期待されています。
– Physical Review D 誌の概要として取り上げられました