鈴木洋一郎特任教授、梶田隆章教授、そしてスーパーカミオカンデ共同実験グループが「基礎物理学ブレークスルー賞」を受賞
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Kavli IPMU鈴木洋一郎特任教授、東京大学宇宙線研究所 梶田隆章教授、そしてスーパーカミオカンデ共同実験グループが、ニュートリノ振動の発見とその研究についての功績により、2016年「基礎物理学ブレークスルー賞(Breakthrough Prize in Fundamental Physics)」を授与されました。
今回の受賞理由は「ニュートリノ振動という本質的な発見をし、素粒子物理学の標準理論を遥かに超える新しいフロンティアを開拓した実績」であり、ニュートリノ振動の研究にかかわった5つの実験(Super-Kamiokande, K2K/T2K, SNO, KamLAND, Daya Bay)の共同受賞です。総賞金額300万ドル(約3億円)は5つの実験に分与されます。
授賞式は、11月8日(現地時間)にカリフォルニア州マフェットフィールドにあるNASAのエイムズ研究センターで行われ、その模様はナショナルジオグラフィカルチャンネルで全米に報道されました。ブレークスルー賞は、数学、基礎物理学、生命科学の分野において顕著な功績に対して与えられる賞であり、2012年にユーリ・ミルナー氏らの提唱により創設されました。
スーパーカミオカンデは岐阜県神岡の地下1,000mに建設された50,000トンの純水と13,000本の光検出器からなる装置です。スーパーカミオカンデは宇宙線、太陽、超新星や他の天体で生まれるニュートリノの研究および陽子の崩壊を探る実験装置です。スーパーカミオカンデは今回共同受賞したK2K/T2K長基線ニュートリノ実験においても重要な装置であり、加速器で発生したニュートリノを遠隔地で捉えるためにも使用されています。スーパーカミオカンデは大気ニュートリノの観測により1998年にニュートリノ振動を発見しました。この発見をもたらしたものは、地球サイズ規模の距離を飛行する間にミュータイプの大気ニュートリノがタウタイプに振動するために消失したようにみえる、という観測結果でした。2001年には太陽で生まれた電子型ニュートリノに関する詳細な研究論文を発表し、太陽ニュートリノ振動の証拠につながる観測データを示しました。梶田教授(現宇宙線研究所所長)は大気ニュートリノ研究を主導し、鈴木特任教授は太陽ニュートリノ研究を主導するとともに後にはスーパーカミオカンデ実験グループの代表者としてグループを牽引されました。スーパーカミオカンデにおけるニュートリノ振動の発見はニュートリノが質量を持つことを示し、素粒子の標準モデルが完璧ではないことを示すものでした。また、その発見は今回共同受賞した他の実験による研究に引き継がれ、そして今後も将来のニュートリノ研究へと引き継がれていくものです。
中畑雅行教授(東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設長、現スーパーカミオカンデグループ代表)は、「今回の受賞において、神岡の地で行われた実験が5つの実験のうち、3つを占めることは驚くべきことです。小柴昌俊東京大学特別栄誉教授が率いられたカミオカンデ実験に始まり、ニュートリノに関する知見がこの30年間に飛躍的に進展しました。」とコメントしています。また、ヘンリー・ソーベル カリフォルニア大学アーバイン校教授(スーパーカミオカンデグループ アメリカ代表)は、「ニュートリノの神秘を解明する長年の努力が実った最高に素晴らしい業績です。この賞はたいへん価値があり偉大な仲間たちによって成し遂げられた成果です。」と述べられています。
スーパーカミオカンデ実験は文部科学省、アメリカ合衆国エネルギー省科学部の予算により建設・運転され、三井金属鉱業(株)/神岡鉱業(株)のご協力をいただいております。
本受賞にかかわるニュートリノ振動の発見当時は、日本、アメリカ、ポーランド、韓国から以下に示す27の大学・研究機関より約120名の研究者が実験に参加していました。
- 東京大学 宇宙線研究所(日本)
- ボストン大学 物理学部(アメリカ)
- ブルックヘブン国立研究所 物理学部門(アメリカ)
- カリフォルニア大学アーバイン校 物理天文学部(アメリカ)
- カリフォルニア州立大学 物理学部(アメリカ)
- ジョージマソン大学 物理学部(アメリカ)
- 岐阜大学 生涯学習教育研究センター(日本)
- ハワイ大学 物理天文学部(アメリカ)
- 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所(日本)
- 神戸大学 理学部物理学科(日本)
- 京都大学 理学研究科物理学第二教室(日本)
- ロスアラモス国立研究所(アメリカ)
- ルイジアナ州立大学 物理学部(アメリカ)
- メリーランド大学 物理学部(アメリカ)
- ミネソタ大学 物理学部(アメリカ)
- ストニーブルック大学 物理天文学部(アメリカ)
- 新潟大学 理学部物理学教室(日本)
- 大阪大学 理学部物理教室(日本)
- ソウル国立大学 物理学部(韓国)
- 静岡福祉情報短期大学 ビジネス情報学科(日本)
- 静岡大学 工学部システム工学科(日本)
- 東北大学 理学研究科ニュートリノ科学研究センター(日本)
- 東京大学 理学部(日本)
- 東海大学 理学部物理学教室(日本)
- 東京工業大学 理学部物理教室(日本)
- ワルシャワ大学 実験物理研究所(ポーランド)
- ワシントン大学 物理学部(アメリカ)
その後、中国、スペイン、カナダを含め以下に示す大学・研究機関も加わり、研究が進められてきています。
- マドリッドオートノマ大学 物理学部(スペイン)
- ブリティッシュコロンビア大学物理天文学部(カナダ)
- 全南大学 物理学部(韓国)
- デューク大学 物理学部(アメリカ)
- 福岡工業大学短期大学部 情報メディア学科(日本)
- グワンジー工科大学GIST校(韓国)
- 宮城教育大学 教育学部 理科教育講座(日本)
- 名古屋大学宇宙地球環境研究所(日本)
- ポーランド国立原子力研究センター(ポーランド)
- 岡山大学 理学部物理学科(日本)
- レジャイナ大学 物理学部(カナダ)
- 成均館大学 物理学部(韓国)
- 東京大学 国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(日本)
- トロント大学 物理学部(カナダ)
- カナダTRIUMF研究所 (カナダ)
- 清華大学 物理工学部(中国)
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