スーパーカミオカンデ改修工事開始についての概要

ニュース

概要

スーパーカミオカンデ(SK)では、宇宙の初期から起きてきた超新星爆発によって蓄積されたニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)の観測に向けて準備を進めております。具体的には、検出器内の純水にレアアースの一種であるガドリニウム(Gd)を添加することで、超新星背景ニュートリノの観測を目指します。そのため、本年は6月1日から9月末にかけて、SKタンクの純水を抜きながらタンクを止水補強する改修工事をおこないます。

改修の動機となる最終目標:超新星背景ニュートリノの観測

超新星爆発の際に放出されるニュートリノは、1987年にカミオカンデにおいて世界で初めて観測され、それ以降観測されていません。1つの銀河内では超新星爆発が30—50年に1度といった稀な頻度ですが、宇宙には数千億個の銀河があり、宇宙全体を見回せばその頻度は数秒に1回くらいになります。宇宙には、宇宙が誕生してから現在までの超新星爆発によって放出されたニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)が漂っていると考えられ、その強度は私達の手のひらを1秒間に数千個通り抜けるほどです。このようなニュートリノを観測することで、超新星爆発のメカニズムを理解し、星が作られた歴史を明らかにしたいと考えています。

観測方法

超新星背景ニュートリノは、これまでもSK検出器内で1年間に数回ほど反応しているはずですが、他のノイズによる反応と区別できず、観測することができませんでした。レアアースの1種であるガドリニウムという物質をSKの純水に添加することによって、この反応を区別できるようになります。図のように、超新星背景ニュートリノのうち最もSKの水と反応しやすい「反電子ニュートリノ」が水中の陽子と反応して陽電子と中性子を放出します。生成された陽電子はチェレンコフ光を放出します。中性子はGdに捕獲されてガンマ線を放出し、そのガンマ線はチェレンコフ光を出します。タンク内のほぼ同じ場所から、連続する2つのチェレンコフ光という特徴的な信号を観測することで、「超新星背景ニュートリノ」を区別しようと考えています。

今回の改修のポイント

止水補強工事
現在のSKタンクでは、観測の問題とならないレベルですが、一日約1トンの純水が漏れています。これまでの調査により、漏れはタンクの底部にあると考えられます。そこで、Gdを溶解するに先立ち、水漏れを止めるとともに、たとえごく近傍で地震などの災害が発生してもSKタンクから水がもれないよう、底部だけでなく、タンク内壁を構成するステンレスパネルのすべての溶接のつなぎ目に止水剤を塗り保護します。

タンク内配管の改良
現在60トン毎時の流速(一巡にかかる日数が35日)でタンク内の水を循環純化させていますが、Gd溶解後になるべく早くタンク内を一様なGd濃度にし、かつ水の透過率を高く保つため、循環の速度をあげ、120トン毎時で通水(17日で一巡)できるよう、水配管を改良します。

不具合のある光電子増倍管(PMT)の交換
前回2005-2006年のメンテナンス以来12年間の運転により数百本のPMTに不具合(信号ノイズ、内部での放電により発光するような故障)が生じており、それらを交換します。

今後の予定

(5月31日:改修工事開始)

〜6月後半:タンク上面部分のPMTの交換作業、側面の最上部の止水補強工事、タンク上部の配管増強工事等
6月後半〜8月:タンクの水位を2mステップで下げていきながら、側部の止水補強工事、PMTの交換作業
8月中旬:タンクの水を抜き切り、底部の止水補強工事、配管改良、PMT交換
9月末頃:タンク内での作業終了
10月初め〜12月中旬:超純水を供給
12月中旬:観測再開
2019年以降:T2K実験の運転期間と調整しながら、Gdを0.01%の濃度まで溶解。

Newsの一覧に戻る