施設長より新年のご挨拶
施設からのお知らせ
新年あけましておめでとうございます。2026年の新春を迎え、皆様に謹んで年頭のご挨拶を申し上げます。
昨年はハイパーカミオカンデ計画の日本政府承認から5年目となる年でしたが、節目となる大きな進展がありました。ハイパーカミオカンデ検出器はニュートリノを捉える巨大な水槽ですが、これを設置する世界最大規模の人工地下空洞が無事完成したことです。計画における最大のリスクを解消し、今後の工程に確かな見通しが立ちました。さらに、純水システムや水槽ライナーの建設が進み、検出器部品の生産も順調です。日本で製造する約2万本の50cm光電子増倍管は約75%が完成し、スペインでのカバー製作、カナダやイタリアでの光センサーモジュールの準備も着実に進んでいます。国際協力の輪は広がり、現在23カ国、約650名の研究者がこの挑戦に参加しています。

ハイパーカミオカンデは、宇宙の起源や物質の本質に迫る世界最大のニュートリノ・陽子崩壊検出器になります。ニュートリノの性質を精密に測定し、宇宙における物質と反物質の不均衡の謎に迫ること、陽子崩壊の発見により素粒子の根本原理に近づくこと、さらには超新星爆発に伴うニュートリノ観測を通じて、宇宙の極限現象を解明することを目指しています。
昨年は、J-PARC(茨城県東海村)の加速器増強も予定通り進み、世界最大強度のニュートリノビームを供給する準備が着々と整っています。また、同じ東海村では中間水チェレンコフ検出器(IWCD)の着工式が行われ、近傍検出器群の整備が本格化しました。これにより、ハイパーカミオカンデ計画の測定精度をさらに高める設備が整いつつあります。
2026年からはいよいよハイパーカミオカンデ検出器の組立・設置が始まります。光電子増倍管や電子回路モジュールの取り付けを国際共同で進め、2027年末には水を満たし試運転を開始、そして2028年には本格運用を迎える予定です。世界中の研究者や学生が神岡に集まり、その能力を最大限に発揮できるような受け入れ体制の整備も急務です。神岡から世界へ広がるこの科学ネットワークは、地域の皆さまの理解と支援なくして成り立ちません。
本年も皆様からのご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。皆さまにとって希望に満ちた一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。

2026年元旦
東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設長
塩澤真人