【論文紹介】XENONnTによる世界初の「ニュートリノの霧」の中の暗黒物質探索

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暗黒物質直接探索実験XENONnTグループが発表した論文が、Physical Review Lettersの注目論文として「Editors’ Suggestion」に選ばれました。

XENONnT実験は、液体キセノンを用いた検出器を使用して、暗黒物質が原子核と衝突する際に生じる微弱な信号を観測しようとしています。XENONnT実験が観測できる暗黒物質の質量範囲は、数GeV/c2から数TeV/c2ですが、数GeV/c2程度の軽い暗黒物質と原子核の衝突で生じる信号と、実験室に飛来するニュートリノによって生じる信号とは区別が難しく、この領域の暗黒物質に対する感度を制限する原因の一つとなっています。これを暗黒物質探索実験の世界では、「ニュートリノの霧」と呼んでいます。

今回の論文では、この「ニュートリノの霧」がかかる質量領域(暗黒物質の質量が3-12 GeV/𝑐2)内で、軽い暗黒物質の探索を世界で初めて行いました。この研究では、様々な暗黒物質のモデルやバックグラウンドを考慮することで 、従来よりも低いエネルギーしきい値(0.5-5.0keV)の範囲で解析を行うことが可能になりました。その結果、バックグラウンドに対して有意な暗黒物質の信号は見られませんでしたが、6GeV/𝑐2 の質量を仮定したスピンに依存しない暗黒物質と原子核の反応に対して、世界で最も強い制限を達成することができました。

今回探索した質量範囲では、暗黒物質探索は 「ニュートリノの霧」の中に潜む暗黒物質を覗き込む感度に達し、世界初の重要な成果となりました。

 

4つの暗黒物質のモデルに対する、世界の暗黒物質探索実験の感度。
今回の論文の結果は黒太線で示しており、(a)のスピンに依存しない暗黒物質と原子核の反応では、灰色の「ニュートリノの霧」に感度が達していることが分かります。

 

発表された論文:

First Search for Light Dark Matter in the Neutrino Fog with XENONnT
E. Aprile et al. (XENON Collaboration)
Phys. Rev. Lett. 134, 111802 (2025)

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