関谷洋之准教授が2024年度小柴賞を受賞

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小柴賞は、高エネルギー加速器科学研究奨励会が設けた賞の一つで、特に素粒子分野などの基礎科学における測定器技術の開発研究において、独創性に優れ国際的にも評価の高い業績をあげた研究者に贈られる賞です。

2024年度の小柴賞に、スーパーカミオカンデ実験代表者である関谷洋之准教授が選ばれました。今回の受賞は、「スーパーカミオカンデにおける超新星ニュートリノ観測技術の開拓」における功績です。

2020年から、スーパーカミオカンデでは約5万トンの純水にガドリニウムを添加することで、ニュートリノ観測の感度向上に取り組んでいます。これにより、天の川銀河系内で超新星爆発が発生した際のニュートリノ到来方向の決定精度が向上し、さらに、宇宙初期から蓄積された超新星爆発由来のニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)の世界初検出を目指して観測を進めています。

関谷准教授は、スーパーカミオカンデの水純化システムの責任者を務めるとともに、2014年からはガドリニウム計画推進グループのリーダーの一人として技術開発を主導しました。 特に、ガドリニウムを保持したまま水の透明度を保つ樹脂の開発や、放射性不純物の少ない硫酸ガドリニウムの製造技術の確立に貢献し、その功績が高く評価されました。

ガドリニウムの導入により、6種類のニュートリノのうち、反電子ニュートリノの識別効率が大幅に向上しました。その結果、天の川銀河中心で超新星爆発が起こった場合、放出される超新星ニュートリノの方向を、約90秒以内に3度程度の精度で特定し、世界中の望遠鏡へ迅速に通知できるようになりました。これはマルチメッセンジャー天文学の発展に大きく寄与すると期待されています。また、超新星背景ニュートリノの観測においても、電子ニュートリノなどバックグラウンド成分を抑制し、その兆候を捉えることができました。こうしたスーパーカミオカンデの改良に対する関谷准教授の多大な貢献が認められ、今回の受賞につながりました。

関谷准教授は今回の受賞について、「神岡で研究する者として、小柴賞を受賞できることを大変光栄に思います。スーパーカミオカンデ・ガドリニウムプロジェクト(SK-Gd)の実現は、水システムを運用するWater Teamの歴代メンバー、SK共同研究者、さらに水処理メーカーやレアアースメーカーをはじめとする多くの方々とともに、長年にわたり取り組んできた努力の結晶です。この受賞は、全員での協力の成果であり、共に成し遂げたものと受け止めています。今後、アップグレードされたスーパーカミオカンデを活用し、超新星背景ニュートリノの初検出や、銀河系内での超新星爆発によるニュートリノ検出と他の天体望遠鏡へのアラーム発出の実現に向けて、引き続き研究を推進してまいります。ひきつづき、スーパーカミオカンデへのご支援をよろしくお願いいたします。」とコメントしています。

 

関谷洋之准教授

 

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高エネルギー加速器科学研究奨励会 褒賞―2024年度選考結果
スーパーカミオカンデへのガドリニウム追加導入の完了(2022/7/8)

 

 

 

 

 

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