施設長より新年のご挨拶
施設からのお知らせ
新年あけましておめでとうございます。2025年の新春を迎え、皆様に謹んで念頭のご挨拶を申し上げます。
昨年は、我々の研究施設において多くの挑戦と進展の一年でした。スーパーカミオカンデ実験では、老朽化も含む機器の不具合に対処しながら、ガドリニウム水を用いたニュートリノ観測データを着実に蓄積できました。宇宙の長い歴史の中で生まれた超新星爆発ニュートリノの観測などの研究も進めてきました。もう一つの挑戦である次期計画ハイパーカミオカンデの建設工事も着実に進められました。昨年はまた、文部科学省による評価が行われた年でもありました。我々の施設としては、スーパーカミオカンデ実験とハイパーカミオカンデ計画が評価の対象となりましたが、どちらも着実な進展が認められ、継続して推進していくことが認められました。中畑雅行前施設長の紫綬褒章受賞も大変嬉しいニュースでした。
今年は、これまでの成果を基にさらなる飛躍を目指します。特に注力するのは、ハイパーカミオカンデ計画の推進です。本年は世界最大規模の人工地下空洞となる本体空洞を完成させ、水槽建設に着手する予定です。また世界中の研究者と協力して、ハイパーカミオカンデ検出器に設置される実験機器を製造していきます。日本が担当する直径50cmの光センサーはすでに1万個を超える数が製造されていますが、今年はそれらの精密な調整作業(実験の性能を決める非常に大事な研究)が始まります。また光センサーの設置方法の試験も進めます。一方、この光センサーの信号を処理する電子回路は、日本も含む世界8カ国で分担して開発と製造を進めていきます。今年はプロトタイプによる検証試験と実機製造を進め、欧州原子核研究機構(CERN、素粒子研究のための世界有数の研究所)において組み立てを行う予定です。組み立てられた電子回路モジュールは最終的にハイパーカミオカンデ検出器に設置される予定です。
私たちの研究は、世界の研究者や学生が参加し、国際協力により建設や観測を行うものです。そのためには、世界中の研究者が集い、その能力を最大限に発揮できるような受け入れ体制も必要であり、その整備にも取り組んでまいります。
最後になりますが、本年も皆様からのご支援とご協力を賜りますようお願い申し上げます。2025年が皆様にとって希望と実り多き一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
令和7年 元旦
神岡宇宙素粒子研究施設長
塩澤 真人