原田将之特任研究員が日本物理学会若手奨励賞を受賞
ニュース
神岡宇宙素粒子研究施設の原田将之特任研究員(研究所研究員)がこのほど、日本物理学会若手奨励賞(宇宙線・宇宙物理領域)を受賞したことがわかりました。
将来の物理学をになう優秀な若手研究者の研究を奨励し、日本物理学会をより活性化するために各領域ごとに毎年懸賞するもので、原田さんの受賞対象研究テーマは「スーパーカミオカンデによる超新星背景ニュートリノの探索」です。
私たちの周囲には、宇宙の創生から現在までに発生した過去の超新星爆発によって生成されたニュートリノが重なり合い、フラックスとなって漂っていると考えられており、これを超新星背景ニュートリノと呼んでいます。スーパーカミオカンデでは、この未だ捉えられたことのない、この超新星背景ニュートリノの初観測を目指し、スーパーカミオカンデの純水中にレアアースの一種であるガドリニウムを溶解させ、ニュートリノ反応によって生じた中性子の捕獲効率をあげる「スーパーカミオカンデ・ガドリニウム(SK-Gd) 実験」を進めています。
原田さんは出身の岡山大学で、ニュートリノ物理学が専門でスーパーカミオカンデ実験に参加する小汐由介准教授の指導のもと、超新星背景ニュートリノの発見に向けた研究を行ってきました。今回の受賞理由として挙げられた論文の一つは、2023年9月に発表された原田さんの博士論文で、”Development of Neutron Tagging Algorithm and Search for Supernova Relic Neutrino in SK-Gd Experiment”(SK-Gd実験における中性子捕獲アルゴリズムの開発と超新星背景ニュートリノの探索)です。挙げられたもう一つの論文は、2023年7月に電子版掲載された原田さんが第一著者の査読付き論文”Search for Astrophysical Electron Antineutrinos in Super-Kamiokande with 0.01% Gadolinium-loaded Water” M. Harada et al., The Astrophysical Journal Letters 951, L27 (2023)です。この論文は、SK-Gd実験における初めての超新星背景ニュートリノ探索の結果を、原田さんがスーパーカミオカンデ実験グループを代表して報告しました。結果的に超新星背景ニュートリノの発見には至らなかったものの、スーパーカミオカンデの純水期およそ3000日に匹敵するフラックスの上限値を設定することに成功し、SK-Gd実験が世界で最も良い超新星背景ニュートリノに対する感度をもつことを証明しました。
原田さんは2024年4月から宇宙線研究所の特任研究員となり、SK-Gd実験が進み、ハイパーカミオカンデを建設中の神岡宇宙素粒子研究施設(岐阜県飛騨市神岡町)を拠点に、超新星ニュートリノ・超新星背景ニュートリノの観測を目指して研究に取り組んでいます。
原田さんは「この度、このような賞をいただき、大変光栄に思います。今回の受賞は、指導教員である小汐先生をはじめ、多くの方々のご指導、ご支援や交流がなければ成し得ませんでした。この場を借りてお礼したいです。
本研究はSK-Gd実験で主なターゲットになる超新星背景ニュートリノの探索をしたもので、私自身Gd導入準備から関わってきました。積み重ねてきたことが実を結び、非常に嬉しく思います。SK-Gd実験はまだまだ続きますし、これからはハイパーカミオカンデも始まるので、引き続き若い方々の活躍が求められていくと思います。
本研究の成果がこれからの超新星背景ニュートリノ探索の発展に寄与し、若手研究者の取り組みのきっかけになれば幸いです。今回の受賞を励みに、今後もさらなる研究の発展を目指して邁進してまいります。」とのコメントを寄せています。