前施設長の中畑雅行教授が紫綬褒章を受章
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長年にわたって、その道一筋に打ち込んできた人や、芸術やスポーツの分野で功績のあった人などに贈られる「秋の褒章」の受章者が11月2日に発表され、宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設・前施設長である中畑雅行教授が紫綬褒賞を受章することになりました。太陽ニュートリノと超新星ニュートリノ研究を中心に、ニュートリノ物理学と天体物理学、そして地下での科学研究の発展に尽くしてきた中畑教授の顕著な功績が認められました。
長野県生まれの中畑教授は1988年、東京大学大学院理学系研究科を修了し理学博士号を取得。2003年に宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設の教授に就任し、2014年から同施設長、2015年からは宇宙線研究所副所長を兼務。さらに、2022年4月から2024年3月まで宇宙線研究所長を務めました。
大学院時代は、小柴昌俊特別栄誉教授の研究室に所属し、1年先輩にあたる梶田隆章卓越教授とともに、カミオカンデの建設と超新星や太陽ニュートリノの研究に従事し、1987年には超新星爆発ニュートリノの検出に遭遇。その後、主要メンバーの一人として解析を進め、小柴博士の2002年ノーべル物理学賞受賞に貢献しました。
また、カミオカンデにおいて世界で2番目の太陽ニュートリノの観測にも成功。太陽ニュートリノの観測が理論値より有意に小さいという「太陽ニュートリノ問題」を再確認し、後の太陽ニュートリノ振動の発見につながる道を拓きました。カミオカンデの後継であるスーパーカミオカンデでも太陽ニュートリノの精密測定を行い、(電子ニュートリノ以外のニュートリノも測定される)ニュートリノ電子散乱による測定値が、カナダのSNO実験の電子ニュートリノの測定値より大きいことを確認したことで、太陽ニュートリノ振動の最初の証拠を得ました。その後も太陽ニュートリノの研究を進め、ニュートリノ振動の理解に大きく貢献しました。
2014年からスーパーカミオカンデグループの代表者を務め、過去の超新星爆発で生じたニュートリノの探索研究についても長年研究を続け、過去の超新星ニュートリノがどれだけ飛来しているかについて世界で最も厳しい上限値を与えることに成功。スーパーカミオカンデを改造して、過去の超新星ニュートリノに関する感度をあげ、現在も探索を続けています。
中畑教授はこれらの功績により、カミオカンデのメンバーとして1988年に朝日賞、1989年にアメリカ天文学会ブルーノ・ロッシ賞、1990年に井上研究奨励賞、2001年に鈴木洋一郎名誉教授と共同で仁科記念賞、2009年に井上学術賞、2011年に戸塚洋二賞をそれぞれ受賞。また、スーパーカミオカンデのメンバーとしても、1999年に朝日賞を、2016年基礎物理学ブレークスルー賞をそれぞれ受賞しています。また、カナダSNOLAB ExperimentのAdvisory Committee、スペインCanfranc地下観測所の科学諮問委員会、ニュートリノ物理学と宇宙物理学国際会議の国際ニュートリノ・コミッション、宇宙素粒子と地下物理国際会議の国際諮問委員会など多くの国際組織の委員を務め、世界のニュートリノ物理学と地下での科学研究の発展に大きな貢献をして来ました。
中畑教授のコメント
身に余る褒章を頂き、たいへん恐縮しております。私は1980年頃から小柴昌俊先生のもとで研究を始めました。東京大学の学部生・大学院生として陽子崩壊の発見を目指し、カミオカンデの建設に没頭しました。目的の陽子崩壊は見つからなかったのですが、1987年の超新星ニュートリノの観測、1988年の太陽ニュートリノの観測といったすばらしい成果があがり、研究の主軸がニュートリノへと移っていきました。そして、スーパーカミオカンデにおいてはニュートリノ振動が発見され、数々の大発見に遭遇することができました。
私が研究を進めてくることができましたのも小柴昌俊先生、戸塚洋二先生、梶田隆章先生をはじめとして、多くの良き指導者、先輩方、同僚、後輩に恵まれたからだと思っています。また、地元神岡の方々をはじめとして、多くの方々に支えられて研究を続けてくることができました。この場を借りてあらためて皆様に感謝の意を表したいと思います。
<東京大学本部サイト>
各賞受賞一覧
<東京大学全学サイトUTokyo FOCUS>
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