施設長より新年のご挨拶

施設からのお知らせ

新年のご挨拶を申し上げます。2024年が皆様にとって健康で充実した一年となることを願います。昨年中は、東京大学の研究に対するご支援・ご協力をいただき、この場を借りて改めて感謝いたします。

昨年はパンデミック後の新しい生活そして研究スタイルが始まった年でした。スーパーカミオカンデの実験サイトでの当番シフトが3月から再開され、国内外の研究者の往来が随分増えました。スーパーカミオカンデやハイパーカミオカンデの国際研究グループ会議もオンライン会議から対面会議になりました。中でも10月には、国内外のハイパーカミオカンデ参加研究者約100名が神岡町に集まり、1週間ハイパーカミオカンデの建設や国際協力の議論を行いました(図1)。休憩時のコーヒーや昼食弁当の手配では神岡町の商店にご協力いただき、非常に快適な会議となりました。GSAやスーパーカミオカンデ一般公開の機会に、一般の方の実験施設の見学も再開されました。

そのような中で、スーパーカミオカンデはガドリニウムを水に添加した新たなフェーズでの観測データをためることができました。遠方の超新星爆発ニュートリノの発見を目指して更に観測を続けます。次世代実験となるハイパーカミオカンデ装置の建設も着実に進められたことも幸いでした。世界最大級の地下空洞となる検出器本体空洞の上部のドーム部分が昨年の10月に完成したことが大きな一里塚としてあげられます。図2と3に示すように、ドーム部分は直径69メートル、高さ21メートルと本当に巨大な空洞になりました。空洞は周りの岩盤の重みによる圧力を受けるのにも関わらず、崩れずに形状を保っています。岩盤の位置変化は掘削前後で5 cmほどしかないそうで、空洞のサイズに比べてとても小さいことに驚かされます。これは飛騨片麻岩を中心とするこの地の強固な岩盤に加えて施工会社や設計会社の高い技術力が可能にしたものです。建設工事に加えて、日本チームは光センサーの生産も急ピッチで進めています。光の感度を2倍に高めた世界最大かつ最高性能の光センサーで、これもハイパーカミオカンデの実現に欠かせない要素になります。世界に誇れる環境や技術力などの基礎の上にハイパーカミオカンデ建設という難工事が実現されていることを改めて認識させられます。

ハイパーカミオカンデの建設は全工程7年のうちのほぼ4年が過ぎました。今後も地下空洞のドームの下部分の掘削(図3)、水槽とするべくライナーの施設、光センサーや電子回路、純水装置などの実験機器の設置と大きな工事がまだまだ控えています。海外参加国での実験機器製作も本格化していきます。2026年には国内だけでなく世界で作る実験機器が神岡の地に集まり、ハイパーカミオカンデ装置が完成します。そして実験を開始するのが2027年の予定です。良い報告が今後もできるように進めていきたいと考えています。

 

東京大学宇宙線研究所神岡宇宙素粒子研究施設長
塩澤真人

 

図 1 ハイパーカミオカンデ国際研究グループ会議での集合写真。2023年10月神岡町東茂住にて。

 

図 2  完成したハイパーカミオカンデ本体空洞ドーム部(直径69 m, 高さ21 m)

 

図 3  ハイパーカミオカンデの建設の概要

 

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