大気ニュートリノ振動の発表から25年

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今から25年前の1998年6月5日、岐阜県高山市で開催されたニュートリノ国際会議において、梶田隆章博士が大気ニュートリノについての観測結果を発表しました。タイトルは、”Atmospheric neutrino results from Super-Kamiokande & Kamiokande – Evidence for Numu oscillations-”「スーパーカミオカンデとカミオカンデ実験における大気ニュートリノの結果―ミューニュートリノ振動の証拠―」。

発表ではまず、カミオカンデで観測された、電子ニュートリノとミューニュートリノの数の比が理論値と異なり、ミューニュートリノの数が少ないこと、さらに方向依存性があり検出器に上向きに入ってくるミューニュートリノの数が少ないことなどを示しました。その後スーパーカミオカンデのデータによる解析結果を示し、統計的に明らかに地球の裏側から飛んできたミューニュートリノの数が減っており、それがニュートリノ振動によるものであることを示す有力な証拠であると結論付けました。

梶田博士の発表の後、会場の研究者から拍手喝采が沸き起こりました。ニュートリノ振動は、ニュートリノ質量を持たなければ起きない現象です。それまでの素粒子の理論ではニュートリノの質量はゼロだと考えられており、この発見は当時の常識を超えたもので、新しい物理への扉を開くものでした。そしてこの功績が認められ、梶田博士は2015年ノーベル物理学賞を授賞されました。

この発見から25年、スーパーカミオカンデは観測データを着実に増やし、観測精度を上げてきました。データ数が増えることにより、より精密にニュートリノ振動を理解できるようになりました。今後ハイパーカミオカンデの観測が始まれば、観測数は飛躍的に増加し、これまで見えて来なかった新しい物理が見えてくると研究者は期待しています。

 

ニュートリノ国際会議で発表する梶田博士

 

リンク

ニュートリノ国際会議98のウェブサイト
梶田博士の発表のスライド
梶田博士の発表の動画

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