【論文紹介】ニュートリノ検出器で探索する軽いダークマター

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スーパーカミオカンデ実験グループは、宇宙線によって加速された軽い質量を持つダークマターの探索を行い、結果を論文に発表しました。論文は、Physical Review Letters誌に”Editor’s Suggestion”として掲載され、Physics誌に紹介記事が掲載されました。

宇宙の構成を調べてみると、陽子や中性子など既に観測されている物質は全体の5%しかないことが分かっています。その5-6倍は未知の物質、ダークマターが占めていることも分かってきました。ダークマターは宇宙の成り立ちに密接に関わっていると考えられていますが、まだ誰も観測したことがない正体不明の物質です。世界中でダークマター探索の研究が行われています。近年は1GeV/c2~1TeV/c2の質量を持つWIMPs(Weekly Interacting Massive Particles)と呼ばれる粒子がダークマターの候補と考えられ、その探索が盛んに行われてきましたが、発見には至っていません。このため、最近ではダークマターがもっと軽い粒子である可能性も考えられてきています。

今回の論文では、1GeV/c2以下の質量を持つ軽いダークマターがスーパーカミオカンデ内の陽子を弾き飛ばす現象を探索しました。通常のダークマターはエネルギーが小さいため、スーパーカミオカンデ内に入ってきても観測することはできませんが、ダークマターが銀河中心から飛んでくる宇宙線と衝突し加速された場合には、スーパーカミオカンデで観測できるのに十分なエネルギーを得ることができます。スーパーカミオカンデは粒子の方向を判別できるので、銀河中心からのデータが他の方角からよりも多く観測されれば、ダークマターの信号の発見につながります。

今回、1996年から2018年までのスーパーカミオカンデのデータを用いて観測を行いました。残念ながら今回の探索で信号は発見されませんでしたが、1MeV/c2~300MeV/c2の質量範囲において、これまで未解明だった領域を大きく除外することに成功しました。

 

リンク

発表された論文 “Search for Cosmic-Ray Boosted Sub-GeV Dark Matter Using Recoil Protons at Super-Kamiokande”,  Phys. Rev. Lett. 130, 031802 (2023)

Physics誌に掲載された紹介記事

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