2024.5
工事・開発
ハイパーカミオカンデ用水中電子回路をスーパーカミオカンデで試験
ハイパーカミオカンデでは、光電子増倍管の信号を処理する電子回路などを耐水圧容器に格納し、水中に設置します。この水中電子回路モジュールの動作試験をスーパーカミオカンデで行いました。
2024.5
工事・開発
光センサー取り付け用の試験フレームを使ったテストが本格化
ハイパーカミオカンデタンク内に光センサーや電子回路モジュールを取り付ける手順などの確認を行うため、東京大学柏キャンパスの宇宙線研究所にて、試験用のフレームを使ったテストが本格化しています。
2023.10
プロジェクト全体
ハイパーカミオカンデ共同研究者会議を初めて神岡宇宙素粒子研究施設で開催
2023年10月23-28日、ハイパーカミオカンデ共同研究者会議を開催しました。神岡宇宙素粒子研究施設で共同研究者会議を開催したのは今回が初となります。
2023.10
工事・開発
本体空洞ドーム部の完成
岐阜県飛騨市神岡町の地下で進められているハイパーカミオカンデ実験の建設において、2023年10月3日に本体空洞の上部ドーム部分(直径69m, 高さ21m)が完成しました。
2023.3
プロジェクト全体
初の対面でのハイパーカミオカンデ共同研究者会議を開催
2023年3月6日−11日、ハイパーカミオカンデ共同研究者会議が富山県富山市にて開催されました。共同研究者会議は、2020年2月にハイパーカミオカンデ計画が正式に開始されて以来、1年に数回オンラインで開催されて来ましたが、今回初めて対面での開催となりました。約500名の共同研究者のうち、会場には約110名の研究者が集まりました。
2023.2
工事・開発
外周坑道完成とドーム部掘削開始
2022年7月から開始された外周坑道の掘削が2022年11月5日に完了しました。外周坑道は、本体空洞のまわりを一周(445m)する構造で、実験に必要な設備の設置に使用されます。
11月4日に外周坑道の輪がつながったときの写真です
また、アプローチトンネルから掘削を行っていた、ドーム天頂部に取り付くための頂設導坑の掘削が完了し、ドーム部の掘削が天頂部から開始されました。天頂部中心から徐々に外側、下側へと掘削を進めていく予定です。ドーム部は直径69m,高さ21mにもなる予定です。
ドームの天頂中心部(11/17)
2022.12
プロジェクト全体
カナダ・ヴィクトリア大学と高エネルギー加速器研究機構が覚書を締結
2027年の実験開始を目指すハイパーカミオカンデ実験について、カナダ・ヴィクトリア大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)がこのほど、中間水チェレンコフ検出器の建設についての覚書を締結しました。
2021年にカナダ側で中間水チェレンコフ検出器の建設にかかる予算がカナダイノベーション財団により措置されたことを受けて、覚書にはカナダ側が光検出器(マルチPMT モジュール)や写真測量法を用いた較正システムなどの実験装置を担当することなどが明記されています。覚書の締結はリモートで行われ、KEKの山内正則機構長とヴィクトリア大学のFraser Hof 研究推進副部長がそれぞれ、2022年11月上旬までに署名しました。カナダからは、ヴィクトリア大学のほか、ブリティッシュ コロンビア工科大学、ウィニペグ大学、レジーナ大学、TRIUMF、ヨーク大学、カールトン大学が参加しています。
2022.11
工事・開発
ハイパーカミオカンデ実験の本体空洞施設の掘削を開始
ハイパーカミオカンデ実験の本体空洞施設の掘削が開始されました。人工地下空洞としては世界最大規模となる大空間の掘削は、建設工事の山場です。
2022.9
プロジェクト全体
スペイン・カンフランク研究所とICRRも協定に署名
2027年の実験開始を目指すハイパーカミオカンデ実験について、東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)、スペイン科学イノベーション省が8月下旬までに覚書を締結したことに合わせて 、カンフランク研究所と宇宙線研究所がこのほど、具体的な実施計画などを含む協定を交わしました。
2022.9
プロジェクト全体
スペインとハイパーカミオカンデ実験についての覚書を締結 東京大学と高エネルギー加速器研究機構
2027年の実験開始を目指し、岐阜県飛騨市神岡町で建設が進むハイパーカミオカンデ実験について、ホスト機関の東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)はこのほど、スペイン科学イノベーション省との覚書を締結しました。同実験には、日本を含めて世界20カ国が参加・協力を表明していますが、日本との覚書が締結されるのは、ポーランドに続いて2カ国目となります。
2022.7
工事・開発
トンネル掘削が空洞ドーム中心部に到達しました
2027年実験開始を予定し、現在工事中のハイパーカミオカンデ建設において、トンネル掘削が進み、2022年6月23日に空洞ドームの中心部に到達しました。今後ここを中心としてドームが掘削される計画です。
赤白の棒が立っている場所がちょうど空洞ドームの中心にあたります。左側に黒っぽく見えているのが2020年に掘削された地質調査のためのトンネルで、ハイパーカミオカンデ建設用のトンネルとドーム中心部分で接続されました。
この写真でもだいぶ人が小さく見えますが、ここでの天井の高さはおよそ9m、幅も9mほどです。完成したハイパーカミオカンデのドーム部だけで高さ21m、直径69mとなる予定ですので、高さは2倍以上、幅は7倍以上と大変大きな空洞となる予定です。
2022.3
工事・開発
アクセストンネルの掘削が予定通り完了しました
ハイパーカミオカンデの超巨大地下空洞掘削、その第一歩にあたるアクセストンネルの掘削が、2022年2月25日に予定通り完了しました。ハイパーカミオカンデ計画の実現に向けた重要なマイルストーンの達成です。今後はアプローチトンネルや周回トンネルの掘削を経て、今年中に本体空洞ドーム部の掘削を開始する予定です。
アクセストンネル終端部。この先にアプローチトンネルを掘削していきます。
2022.2
プロジェクト全体
ポーランドとハイパーカミオカンデ実験についての覚書を締結 東京大学と高エネルギー加速器研究機構
2027年の実験開始を目指し、岐阜県飛騨市神岡町で建設が進むハイパーカミオカンデ実験について、ホスト機関の東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)はこのほど、ポーランド国立原子核研究センター(NCBJ)との覚書を締結しました。同実験には、日本を含めて世界20カ国が参加・協力を表明していますが、日本との覚書が締結されるのは、ポーランドが初めてとなります。
2021.8
工事・開発
スペイングループによる光センサー用カバーの開発
ハイパーカミオカンデでは直径50cmの超高感度光センサーを用います。検出器である水槽中での使用を可能にするために、センサーは十分な耐水圧性能を持ちます。さらに写真で示すような、安全性を高めるためのカバーが取り付けられます。
国際共同研究であるハイパーカミオカンデでは様々な国が研究開発を分担していますが、このカバーの開発と実現に向けては、スペイングループが中心的な役割を担っています。現在開発を進めており、2021年度中の完成および2022年からの量産を目指しています。
スペイングループが開発中のカバーの試作品。透過率の高い紫外線透過アクリルと2.5mm厚のステンレスが使われている。©Autonomous University of Madrid
2021.8
研究会
ハイパーカミオカンデ計画専門評価委員会空洞水槽分科委員
への現地説明会を開催
2021年7月30日に空洞水槽分科委員に対する現地説明会が開催されました。この説明会は、2021年2月11日にオンラインで開催された第1回分科委員会会議で実現できなかったハイパーカミオカンデ空洞ドーム部に設けられた調査横坑からの岩盤状況の視察や、ボーリングで得られたコアの視察等を目的として行われました。
合わせて、空洞掘削の設計・計画についての進捗状況の説明と議論、現在掘削中のアクセストンネルについての視察も行われ、計画通りの順調な進捗状況が確認されました。今回はコロナ禍でもあり、分科委員の中でも特に空洞掘削についての専門家のみに参加を絞っての少人数での説明会となりました。
空洞水槽分科委員会は、ハイパーカミオカンデの世界でも前例のない規模の地下大空洞と水槽の設計と建設計画について、東京大学宇宙線研究所長と高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所長が諮問するために組織されています。この分科委員会は、国内の空洞掘削に関する専門家4名と水槽や光センサー支持架構のような鋼構造に関する専門家3名の合計7名から構成されています。
着実に計画を進めるためにも、今後も専門家の助言を受ける体制を継続していく予定です。
現地説明会での進捗状況説明
掘削予定地のボーリングコアの視察
2021.5
プロジェクト全体
ハイパーカミオカンデの着工記念式典を開催
2027年の実験開始を目指すハイパーカミオカンデの着工記念式典が5月28日、岐阜県飛騨市神岡町の建設現場で行われました。COVID-19の感染拡大を受けた政府の緊急事態宣言が東京都など9都府県に出される中での開催で、オンライン参加となった関係者や来賓も含め、約50人が参加しました。
2021.5
工事・開発
アクセストンネルの掘削が始まりました
ハイパーカミオカンデの超巨大地下空洞掘削、その第一歩にあたるアクセストンネルの掘削が、5月6日に開始されました。昨年度実施された坑口ヤードの造成と整備がほぼ完了し、いよいよ掘削工事が本格的に始まります。およそ9ヵ月で約2kmの長さとなるトンネルを急速施工し、来年度のアプローチトンネル掘削、そして本体空洞掘削へと進んでいく計画です。
ハイパーカミオカンデ計画の実現に向けた重要なマイルストーンが達成されました。 2027年の実験開始に向けて、今後ますますその建設が加速していきます。
掘削が始まったトンネルの入り口
2021.1
工事・開発
ハイパーカミオカンデ用光センサーの製造が始まりました
ニュートリノや陽子崩壊から生じる荷電粒子が高速で水中を飛ぶ際、チェレンコフ光という微弱な光が発生します。 ハイパーカミオカンデではこの光を水タンク壁面に取り付けられた光センサーで検出することで粒子の検出、識別、エネルギーや位置の測定などを行います。
測定の効率や精度を高めるため、性能の高い光センサーの開発が進められてきました。 新型光センサーは現在スーパーカミオカンデで用いられているものに比べて光検出効率、光量測定精度、時間測定精度といった基本的な性能がどれも約2倍程度まで向上しており、ハイパーカミオカンデ全体の性能向上に繋がっています。
ハイパーカミオカンデの光センサー製造がいよいよ始まり、2020年12月に実際に取り付ける製造品が初めて到着しました。 今回納品された光センサーは、安全に長期で使用するための確認と性能測定を経て、壁面に取り付けられる日まで保管されます。
2027年の実験開始に向け、今後約6年かけて光センサーを製造する予定です。
納入された光センサー6本
2020.12
プロジェクト全体
ハイパーカミオカンデの新体制について
ハイパーカミオカンデ計画の日本政府による承認をうけ、計画を推進するための国際共同研究グループ(ハイパーカミオカンデ コラボレーション)が2020年6月に正式に設置されました。
研究グループは、2020年12月に、最初の実験代表者として、塩澤眞人教授(日本代表、東京大学宇宙線研究所)とFrancesca Di Lodovico (海外代表、イギリス キングス・カレッジロンドン)を選出しました。2名とも素粒子・ニュートリノ研究における豊富な経験を持っています。
機関代表者会議の議長には、ニュートリノ物理で素晴らしい業績を持つEmilio Radicioni博士(イタリア バリ大学)が2020年9月に選出され、実験代表者とともにハイパーカミオカンデの建設を指揮していくことになります。
ハイパーカミオカンデ実験代表者に選出された、塩澤眞人教授(左)とFrancesca Di Lodovico (右)
2020.11
イベント
オンライン講演会を行いました
2020年11月22日(日)、「スーパーカミオカンデ・KAGRAオンライン一般公開」のプログラムの一つとして、ハイパーカミオカンデ講演会のライブ配信を行いました。プロジェクトリーダーの塩澤眞人教授が、ハイパーカミオカンデの建設状況や明らかにしたい研究テーマなどについて語りました。
講演の様子はYouTubeのアーカイブ配信でご視聴いただけます。
2020.10
工事・開発
世界最大級の地下空洞掘削に向けた地盤調査が大詰めを迎えています
ハイパーカミオカンデの超巨大空洞掘削が、来年度からいよいよ始まります。この超巨大空洞は内直径69m、高さ73mにもおよぶ円筒部と、それを支えるドーム部からなり、完成すれば世界最大級の地下空洞となる予定です。カミオカンデ、スーパーカミオカンデと積みあげられてきた成果をさらに飛躍的に向上させるには、どうしてもこの規模の空洞が必要となるのです。
スーパーカミオカンデの8.4倍の有効体積を持つ水チェレンコフ検出器がこの空洞の体積をいっぱいに使って構築され、大強度陽子加速器J-PARC の大強度化と組み合わせることにより、宇宙・素粒子研究における新たなブレークスルーを狙います。ニュートリノ振動の究明による宇宙における物質起源の解明や、素粒子の統一理論の証拠となる核子崩壊の発見、超新星からのバーストニュートリノや超新星背景ニュートリノの観測によるニュートリノ天文学の飛躍的発展を目指します。ハイパーカミオカンデは、このような基礎物理学の国際的基幹装置を、20年以上に渡って提供する計画です。
超巨大空洞掘削に向けた地盤調査は、今まさに大詰めを迎えています。これまで、最適な空洞の位置を特定するために、様々な地盤調査が行われてきました。今年度はその決定版として、総長96mの新設調査坑道と総長725mのボーリングの掘削を組み合わせた、大規模な調査が行われています。
空洞想定位置の周辺の様子を、ボーリング及び横向きの坑道(横坑)掘削を通じて調べています。空洞掘削予定地を貫くボーリングでは、空洞予定地附近の岩盤の状態を詳しく確認しています。
HK空洞予定地を貫通するボーリングによる、空洞掘削予定地周辺の地盤調査。
2020年7月には調査横坑の掘削が完了し、ハイパーカミオカンデ水槽のドーム部中心地点に到達しました。ここでは現場にて岩盤の特性を調べる、原位置試験などが行われています。地盤調査は順調に進捗しており、来年度から始まるアクセストンネル掘削、それに続く空洞掘削の最終準備が整いつつあります。
HKドーム部の地盤調査のために掘削された横坑。横坑の終点付近、空洞ドーム部の中心地点の天井には、地盤調査業者によるHK中心のマーク(中央下)。
2020.5
プロジェクト全体
東京大学、KEK ハイパーカミオカンデ計画の推進に関する覚書を締結
東京大学と高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、これまでハイパーカミオカンデ計画構想を具体化するための機関間の協力に関する覚書により、関係を強固なものにしてきました。このたび、本計画の本格着手に併せて、当該覚書を発展させ、両機関の協力体制を確実なものにするための組織を明確化するなど連携をより一層強化し、本計画の着実な推進を図ることを目的として、本年5月、ハイパーカミオカンデ計画の推進に関する覚書を締結しました。
2020.3
研究会
オンラインシンポジウムを開催しました
2020年3月18日(水)、新学術領域「ニュートリノで拓く素粒子と宇宙」と日本物理学会の共催により、オンラインでのシンポジウム「宇宙と素粒子の残された謎の解明に向けた、次世代ニュートリノ観測・陽子崩壊実験(ハイパーカミオカンデ)」を開催しました。
本来このシンポジウムは、日本物理学会第75回年次大会の中で開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大予防のため現地開催を中止し、オンラインでの開催となりました。
シンポジウムでは、ハイパーカミオカンデの紹介、ハイパーカミオカンデプロジェクトに必要な光センサーの技術や、大強度ニュートリノビームについての講演があり、ハイパーカミオカンデがニュートリノそのものの性質の解明、宇宙や原子核の理解、そして陽子崩壊を通した素粒子模型の理解にどのような意義を持つかについての講演が行われました。
テレビ会議システムでの接続数は90を超え、一部は会議室から複数の方が参加があったため、100名以上の方が参加者されました。
【リンク】
- シンポジウムで使われたスライドはこちらからご覧いただけます。
- 新学術領域「ニュートリノで拓く素粒子と宇宙」
2020.3
工事・開発
光センサー取り付けフレームの実物大模型が設置されました
ハイパーカミオカンデの光センサー取り付けフレームの一部を模した実物大モックアップが東京大学宇宙線研究所(千葉県柏市)に設置されました。
モックアップは高さ約3m, 幅約3m, 厚さ約0.6mの大きさで、横に3列、縦に4列の光センサーが取り付けられるようになっており、これを用いてハイパーカミオカンデの建設に関わる様々な試験が行われています。
ハイパーカミオカンデでは、用いる光センサーの構造や連鎖爆縮防止用カバーのデザイン、センサーの取り付け方法など、実際の建設に向けて検討しなければならない事項が残っています。また、取り付けられるセンサーの数は40,000本と膨大であり、迅速な建設によって測定開始を早めるためにもこれら多数のセンサーを効率よく、かつ精度よく取り付ける方法を見つけなければなりません。
このような課題を解決するため、実際に用いるものと同じ構造と重量の光センサーを実物大モックアップに取り付け、取り付けの精度や固定の安定性、作業効率などを確認しています。また、フレームの外側と内側を分けるブラックシートの取り付け方法やシートの構造も検討事項の1つであり、ブラックシートのプロトタイプを取り付けてその遮光性や安定性を測定する調査も今後行われる予定です。
現状では日本製の光センサーとカバーを用いた取り付け試験が可能であり、いくつかの取り付け方法での調査が行われました。 今後、他国製の光センサーやカバーについても取り付け方法を検討し、試験を行っていく予定です。
光センサー取り付けフレームの実物大模型
フレームに光センサーと連鎖爆縮防止用のカバーを取り付けたところ
2020.2
プロジェクト全体
ハイパーカミオカンデ計画の開始について
ハイパーカミオカンデ計画は、日本をホスト国とする国際協力科学事業であり、スーパーカミオカンデの8.4倍の有効体積を持つ水槽と超高感度光センサーからなる超大型地下実験装置とJ-PARCの高度化により、宇宙の物質の起源と素粒子の統一理論の解明を目指すものです。
この度、ハイパーカミオカンデ計画の初年度予算35億円を含む2019年度補正予算が成立し、ハイパーカミオカンデ計画を正式に開始する運びとなりました。
日本の分担は、ハイパーカミオカンデ検出器の地下空洞掘削、水槽と構造体、内水槽光センサーの半数、水循環システムの主要部分、初段データ解析システム、J-PARC加速器およびビームラインのアップグレード、前置検出器のための施設整備になります。一方海外参加国の分担は、光センサーの防爆カバーと集光システム、内水槽光センサーの残り半分、外水槽光センサー、データ読み出し回路、検出器較正システム、前置検出器等となります。
今後建設を着実に進め、2027年の実験開始を目指します。海外パートナーと協力し、ニュートリノ物理学とニュートリノ天文学の発展に資したいと存じます。
2020年2月12日
東京大学
高エネルギー加速器研究機構
J-PARCセンター
2020.2
研究会
第5回ハイパーカミオカンデ諮問委員会空洞水槽分科委員会が開かれました
空洞水槽分科委員会は、ハイパーカミオカンデの世界でも前例のない規模の地下大空洞と水槽の建設計画について、東京大学宇宙線研究所長と高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所長が諮問するために組織されています。この分科委員会は国内の工学の専門家で構成され、建設計画を外部の目で評価し助言するものです。
2020年1月29-30日に第5回分科委員会が開催されました。初日は岐阜県飛騨市神岡町のハイパーカミオカンデ建設予定地の視察を行いました。2日目は、富山県富山市にて詳細な議論の場が設けられ、地盤調査、空洞掘削、水槽建設について前回の分科委員会(2019年6月)で提示された指摘や助言を受けての対応状況、建設準備状況や今後の計画を説明されました。特に目前に控えた地盤調査計画に関して、委員による詳細まで踏み込んだ評価や指摘がなされました。
着実に計画を進めるためにも、今後も専門家の助言を受ける体制を継続していく予定です。また、今回の委員会での内容は報告書として公開される予定です。
ハイパーカミオカンデ建設予定地の視察
2日目の分科委員会での議論
2020.1
2019.5
工事・開発
電子回路に時報を送る、タイミング同期システムの開発
ハイパーカミオカンデでは、光電子増倍管が光を検出した時間と光の量を正確に測定する必要があります。ハイパーカミオカンデのタンクは非常に大きいため、タンク底に設置した光電子増倍管からタンクの外までケーブルをのばすと、その全長は150m以上になってしまうと見積もられています。光電子増倍管の信号は微小で、このような長いケーブルを使うと信号が減衰してノイズの影響をうけやすくなってしまいます。このため、現在は光電子増倍管24本につき1つの「読み出し回路」を用意し、これを水中に設置、ここで信号をデジタル化したのちに光ファイバーでタンクの外まで送るシステムを検討しています。
この「読み出し回路」はタンクの様々な場所に設置されることになりますが、それぞれの「読み出し回路」の間で「時計」がそろっていないと、正確な光の検出時間を測ることができなくなってしまいます。各読み出し回路の「時計」をそろえるためには、光ファイバーを用いてタンクの外から基準となる「時報」を送ってやる必要があります。時報は100ピコ秒(100億分の1秒)よりも良い精度で送る必要があります。
現在、この「時報」を送るための電子回路の試作試験を行っています。写真ではオレンジ色の短い光ファイバーを用いて試験した結果、時報の誤差は数10ピコ秒と十分性能を満たすことがわかりました。今後、200mの光ファイバーを用いた試験を行ったのち、より実際に近いシステムを設計、構築する予定です。 このシステムは、東工大を中心に東大宇宙線研およびE3デザイン株式会社が共同で開発しています。
読み出し回路に時報を送るための電子回路の試作試験
2019.1
イベント
講演会「ハイパーカミオカンデ計画」を開催しました
2019年1月12日(土)岐阜県飛騨市神岡町公民館にて、講演会「ハイパーカミオカンデ計画」を開催しました。県内外から約200名という多数のご参加をいただきました。
講演会は、都竹淳也飛騨市長からの挨拶で始まりました。今年3月27日に神岡町にオープンする「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」の展示の概要や今の建設状況について説明がありました。「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」は、飛騨市が神岡町の道の駅「スカイドーム」の一部を改装して、スーパーカミオカンデなど神岡での研究活動を紹介する展示施設です。東京大学宇宙線研究所や東北大学が監修にあたり、オープンの準備が進んでいます。
ハイパーカミオカンデ計画代表の塩澤眞人教授による講演「ハイパーカミオカンデ計画」では、ハイパーカミオカンデの目的や進捗状況について説明がありました。塩澤教授は、「ハイパーカミオカンデは、素粒子と宇宙の大きな謎の解決に向け、2020年に建設を始めます。飛騨市の皆さんには我々の研究にいつもご理解とご協力をいただき感謝しております。」と述べました。
飛騨市をはじめ岐阜県内外から約200名の参加がありました
都竹淳也飛騨市長から「ひだ宇宙科学館カミオカラボ」の紹介
会場からの質問に答える塩澤眞人教授
2018.7
研究会
国際研究会「ICHEP2018 Satellite Meeting for Hyper-Kamiokande and KNO」を開催しました
2018年7月8日に、ソウルにて国際研究会「ICHEP2018 Satellite Meeting for Hyper-Kamiokande and KNO」を開催しました。 日本、韓国、他海外より約60名の研究者が参加し、ハイパーカミオカンデにおける観測の期待感度や研究の意義、国際協力などについて議論しました。 韓国の素粒子や天文学研究者、J-PARCセンター長、ハイパーカミオカンデ研究者を講演者として迎え、また最後にラウンドテーブルを企画し、研究会を通じ活発かつ有意義な議論を持ちました。
ハイパーカミオカンデは韓国に二機目の検出器を置くことで、他実験ではできないユニークかつ重要な研究の機会がさらに広がることが確認されました。また、韓国研究者を含む参加者から、ハイパーカミオカンデの早期実現に大きな期待が寄せられました。
講演の様子
ラウンドテーブルの様子
2018.3
工事・開発
改良型、および新型光センサー保護カバーの試験を行いました
ハイパーカミオカンデや現行実験であるスーパーカミオカンデのアップグレードで使用される新型大型光センサには、連鎖爆縮(*)を防ぐための保護カバーが取り付けられます。装置が深ければ深いほど水圧は上がるため、さらに強力な保護カバーが必要となります。
ハイパーカミオカンデ(水深約60m)では現行のスーパーカミオカンデ(水深約40m)よりも強力なカバーを開発することが重要な課題となっています。そして、実際に使うためには本当に水中で連鎖爆縮が防げることの実証試験が必要となります。これには単に水圧を掛けて試すだけではなく、一つの光センサが壊れても連鎖的に爆縮が起きない事を確認しなければなりません。
我々はすでに2016年3月にこの試験を行っており、試作機の実証試験に成功しています。 今回、その試作機の改良型に加え、樹脂製保護カバー、共同研究者のスペイングループが製作したステンレス製筒型カバー、の計3種類の保護カバーの実証試験を行いました(写真1、2、3)。
(写真1) 試験の様子。保護カバーを付けたセンサを中心に配置し、周囲を裸のセンサで囲む。これを深水に沈め、保護カバー内部のセンサをプッシャーと呼ばれる装置で割り、衝撃波が周りのセンサを破壊しないことを確認する。 中心は改良型カバーを取り付けたセンサ。センサのガラスおよび保護カバー表面には見やすくするためにテープを貼ってある。
(写真2) 今回初めて試験を行った樹脂製の保護カバー。従来のステンレス製試作機に比べて非常に軽量である。
(写真3) スペイン共同研究者が製作した保護カバー。形状が比較的簡易であるため、安価な製造コストが期待される。
試験は2018年3月5日から3月10日まで、前回と同じく北海道空知郡上砂川町にある旧地下無重力実験センター跡地にて行われました(写真4)。
結果、それぞれ80m, 40m, 60mの水深で連鎖爆縮を防ぐことが実際に確認されました。 また、保護カバーの種類による衝撃波発生の違いや、形状や材質の異なるカバーの変形の違いなど、深水下での爆縮という現象を理解する上で貴重なデータを取得することができました。 これらに加え、比較的小型の光センサが深水で爆縮を起こす事の確認、新型の破壊装置の試作機テストなど、成果の多いものとなりました。 このような貴重なデータを短期間で得ることが出来たのは、上砂川町の多大な支援によるものです。
また、今回の試験の前の2月23日には、東京大学宇宙線研究所の亀田純助教が上砂川中学校にて「ニュートリノ講演会」で講演させていただき、生徒さんや町民の皆様、約100名の方にご参加いただきました。
(*)センサが爆縮を起こすときに発生する衝撃波が隣のセンサを割り、それにより発生した衝撃波がさら隣を割る、という連鎖的な破壊現象。
(写真4) 北海道空知郡上砂川町にある旧地下無重力実験センターの建屋。
(写真5) 試験期間の最低気温はマイナス10度を下回った。写真は試験場内に張ったロープに出来た氷柱(つらら)。
2017.7
工事・開発
10気圧に耐えられる水中用ケーブルとコネクタの開発
ハイパーカミオカンデでは、光センサー(光電子増倍菅)を約4万本利用する予定です。各光センサーからは、光センサーを動作させる高電圧を供給するため、及びセンサーからの電気信号をとりだすためのケーブルがとりつけられており、これらを配線する必要があります。スーパーカミオカンデでは、全ての光センサーに70mのケーブルが取り付けられ、これらのケーブルをタンクの外まで引き上げられ、とぐろを巻いています。
スーパーカミオカンデのタンク上にとぐろを巻いている70mのケーブル
ハイパーカミオカンデは検出器が大きく、タンクの中からケーブルを引き出そうとすると、必要なケーブルの長さは150m以上となってしまいます。しかし、長いケーブルは信号の質を劣化させますし、また、この長さのケーブルを検出器が支えなくてはいけません。ケーブルの重さは1mあたりでは100g程度ですが、全体では600トン以上となってしまいます。よって、現在は光センサーに高電圧を供給したり、光センサーの信号をデジタル変換したりする電子回路を、タンク内(水中)に設置することを検討しています。このためにはタンク内でケーブル を接続する必要があります。接続に水中コネクタを用いることができれば、検出器の建設時の手間を大幅に減らすことが可能となります。
水中でケーブル接続するためのコネクタの試作品
現在、水タンクの最大水深を考慮して、10気圧の環境でも利用可能なこと、2500Vの高電圧を供給しつつ信号もやりとりできること、簡単に着脱できること、さらに純水中で水を汚さないこと(部品が溶け出さないこと)といった条件を満たすコネクタの開発を行っています。
これ以外にも、電子回路に電源を供給したり、デジタル変換されたデータを読みだしたりするためにもケーブルを接続する必要があります。今回のコネクタの開発にあたっては、 汎用の外殻と、配線の種別に応じた内側の接続部分を組み合わせた形とすることで、複数の用途に対応出来るものを開発しています。
また、コンピュータ間などの通信に用いられる一般的なイーサネットケーブルは、圧力がかかると変形してしまい、通信速度が遅くなったり、うまく通信できなくなったりすることが知られています。このため、10気圧程度でもケーブルがつぶれず、通信性能が劣化しないケーブルの開発も進めています。ここでも、素材は純水をよごさないものを用い、ハイパーカミオカンデの水の透過率に影響を与えないように配慮しています。
2017.4
工事・開発
ハイパーカミオカンデに向けたソフトウエアの開発
ある物理に対してHKがどのような感度を持っているのかを調べるためには、ソフトウエアの開発が必要不可欠です。ソフトウエアはHKの詳細なデザインを決定するのに重要な役割を担います。HKでは約40,000本の光センサーが使われる予定です。光センサーにはいくつか候補があって、その個々の性能は測定することができるのですが、実際タンクに40,000本取り付けてニュートリノ反応の見え方にどのような違いが現れるのかというのは、なかなか頭で考えても予想するのが難しいのです。こうした場合、コンピュータ上で仮想的にHKを作って実験を行う「シミュレーション」という手法を用います。
この仮想実験では、ニュートリノがどのように反応して様々な粒子を生成するかという物理事象のシミュレーションと、生成された粒子が検出器内でどのように捕らえられ、最終的に信号としてどう見えるのかを模式する検出器シミュレーションに分けられます。前者の場合、物理は普遍的なものなので、SKやT2K実験で用いられているものを使うことができます。検出器シミュレーションにはタンクの大きさ、形状、水の光学的な特性、光センサーの性能やそれらの信号の読み出し方法なども組み込まなければなりません。検出器シミュレーションは、欧州原子核研究機構(CERN)で開発されたGEANT4というシミュレータをベースにして、アメリカのDUKE大学が中心にHKや他の水チェレンコフ検出器にも対応できる汎用性の高いシミュレーションを開発しました。このソフトウエアでは、タンクの大きさや光センサーの数を容易に変更でき、さらに光センサー部分や読み出し部分をモジュール化して入れ替えることにより、様々な検出器のデザインに対応できるように作られています。図1はHKシミュレーションの1例です。
図1:HKタンク中心から側面に向かうミュー粒子のシミュレーション。黄色の点が受光した光センサーを示す。
検出器の性能を知るためには、光センサーの情報を集め、光を出した粒子の個数、生成点、方向、運動量などの物理量を再構成するソフトウエアも必要です。SKで従来使われている手法では、各物理量を一つずつ順番に決めていましたが、予想される光量分布を光センサーの情報にフィットさせることにより物理量を一度に決定することのできる、新しい手法がHKに向けて開発されているところです。新しい手法では、今まで使われていなかった「光センサーが受光しなかった」という情報も用いて、従来よりも精度良く物理量を決定することができると期待されています。
図2は、様々な運動量の電子とミュー粒子をHKシミュレーションで生成し、それを新しい手法で再構成した時の分解能を示しています。HKで使われる光センサーは1光子を検出する能力が2倍に上がっているので、SKと同じように壁面を光センサーで40%覆った場合の分解能はSKよりも大きく改善されることが示されています。
図2:電子(左図)とミュー粒子(右図)の運動量(横軸)とその分解能(縦軸)。緑はSKの性能で、赤はHKの壁面を新型光センサー14 %覆った場合、青が40 %の場合を示す。
2017.3
工事・開発
ハイパーカミオカンデの電子回路を開発中です
ハイパーカミオカンデの光センサー1本1本からは、受光量に比例した電気信号が出力されます。ニュートリノや陽子崩壊などの事象観測を行うためには、信号が出力された時間と電荷量を精度よく測定する電子回路が必要となります。
現在、専用の電子回路の試作、評価が行われています。
もし、光センサーから届いた電荷量に比例した時間幅を持つパルス(信号)を作ることができれば、信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間を測定するだけで、光がセンサーに届いた時間と、受光量を測定することができます。スーパーカミオカンデでは、電荷量を時間に変換する専用のLSI(大規模集積回路)を開発し、用いてきました。
スーパーカミオカンデ用に開発されたLSI CLC101(ICRR/岩崎通信機(株))
ハイパーカミオカンデにおいては、同様のLSIを使うことを検討しており、現在はスーパーカミオカンデ用のLSIを用いて試験を行っています。
時間の測定には、FPGAと呼ばれるプログラミング可能なLSIを用いることを検討しています。FPGAは一般にも広く使われており、近年その性能がどんどん向上し、10-10秒の精度での時間測定すら可能となってきています。 これら二つを組み合わせる評価システムを米国の研究所・大学のグループと共同で開発しています。
米国と共同開発しているボード
また、全く新たな手法として、波形を記録する専用のLSI(FADC)を用いる手法についても開発研究を行っています。こちらは、電気信号の波形を1秒間に数億回記録、波形データをさらに信号処理することによって、信号の入力時間や電荷量を精度よく測定しようとするものです。こちらのシステムはカナダとポーランドのグループと共同で開発しています。
これらの開発を通し、1検出器あたり50,000本の光センサーからの信号を精度よく、小さい消費電力で記録するシステムを安価に構築すること目指しています。
カナダやポーランドのグループと開発しているボード
2017.2
研究会
国際研究会「Supernova at Hyper-Kamiokande」を開催しました
2017年2月12-13日の両日に、東京大学・小柴ホールにて国際研究会「Supernova at Hyper-Kamiokande」を開催しました。 国内外より約100名の研究者が参加し、超新星爆発や宇宙を占める暗黒物質などから飛来する 宇宙ニュートリノの、ハイパーカミオカンデにおける観測の期待感度や研究の意義などについて議論しました。 国際的に第一線で活躍する理論・実験研究者を講演者として招待し、質疑応答も活発に行われ、 非常に有意義な議論を持てました。
ハイパーカミオカンデは現行実験に比べて桁違いの感度を持つことが改めて確認され、 外部の招待講演者からもハイパーカミオカンデの早期実現に大きな期待が寄せられました。 また、この月はちょうど超新星爆発SN1987Aからのニュートリノ観測から30年にあたることから、 その記念講演および記念祝賀会も合わせて開催し、歴史的な成果を振り返る機会となりました。
研究会に参加した研究者
超新星爆発SN1987Aからのニュートリノ観測30周年を祝う記念祝賀会。 カミオカンデの検出データのプリントアウトとデータが記録された磁気テープも披露されました
2017.2
工事・開発
ハイパーカミオカンデ建設予定地の地盤調査を進めています
現在、ハイパーカミオカンデ検出器水槽(直径74メートル・高さ60メートル)の建設予定地において地盤調査を進めています。この調査では、写真に示すように、人工的に発生させた地面振動を周辺の多地点で同時測定することにより、広域での地盤情報を3次元的にとらえます。これまでのボーリングによる調査の結果を補強し、建設計画作りに役立てます。
自動落下打ち込み装置(ドロップヒッター)を使って地面振動を発生させる様子
受振器により地面振動を測定する様子
2016.3
工事・開発
光センサ保護カバーの強度試験を開始しました
写真1:開発中の光センサ保護カバー
スーパーカミオカンデのアップグレードやハイパーカミオカンデで使用する新型光センサには、連鎖爆縮※1を防ぐための保護カバーが取り付けられます。現行のスーパーカミオカンデの光センサにも保護カバーが取り付けられていますが、新型センサ用に性能アップした保護カバーを開発中です。今回開発された保護カバーは、写真1に示したもので、前側(光を受ける側)がアクリル製、後ろ側がステンレス製となっています。
※1 真空の光センサが水中で割れた場合の衝撃波で隣の光センサを破壊する連鎖反応のこと
2016年2月より、保護カバーの強度試験を、旧地下無重力実験センター(北海道空知郡上砂川町) (写真2)において開始しました。試験は、水チェレンコフ実験装置の水圧状態をシミュレーションするのに 十分な深さと大きさを持つ立坑の、水深約100mの位置において行われます。試験のセットアップ を写真3に示します。
写真2:旧地下無重力実験センター(北海道空知郡上砂川町)
写真3:保護カバーの強度試験セットアップ(旧地下無重力実験センター)
2015.5
研究会
「ハイパーカミオカンデにおける宇宙ニュートリノ観測」研究会が行われました
2015年5月18日~19日にかけて、神戸大学瀧川記念学術交流会館において、「ハイパーカミオカンデにおける宇宙ニュートリノ観測」研究会が開催されました。
本研究会では、将来の宇宙ニュートリノ観測について理論/実験の研究者間の情報交換をはかり、議論を深める事を目的としました。主に神戸大学自然科学系先端融合研究環からのサポートを受けて、宇宙ニュートリノに関する理論的研究に取り組んでいる研究者を招聘し、講演を行っていただきました。
研究会には、海外からの招聘者を含めて29名の研究者の参加がありました。
講演の途中でも質疑応答が多く発せられ、活発な議論が行われました。実験グループが十分に認識していなかった研究内容の紹介もあり、次世代の大型水チェレンコフ検出器で可能なサイエンスに関する認識が深まりました。
2015.5
工事・開発
新型光センサーの強度試験を行っています。
ハイパーカミオカンデの巨大な水槽は水深48mにも及ぶため、水中に取り付けられる光センサーには、その高い水圧まで確実に耐える強度が求められます。
ハイパーカミオカンデプロジェクトで開発中の新型光センサーは、高い光検出性能だけでなく、強度面でもスーパーカミオカンデ用の光センサーから大きく改善されています。この新型光センサーの試作機の耐水圧性能の試験が始まりました。
写真は、耐水圧試験の様子です。直径50cmのガラスでできた新型光センサーは、円筒形の金属筒に収納され、青色の高水圧小型タンクに順次入れられて試験されます。
新型光センサーが円筒形の金属筒に収納され、青色の高水圧タンクに入れられる。
これまで、2種類の新型光センサー試作機を数本試験して、ハイパーカミオカンデ設計水深の2倍を越える、水深100m以上まで耐えることが確認されました。
得られた試験結果をもとに、光センサーの設計を見直し、更に耐水圧性能の向上を行っていく予定です。
2015.4
研究会
日本物理学会第70回年次大会において講演を行いました。
2015年3月21日から24日にかけて、早稲田大学を会場として日本物理学会第70回年次大会が開催されました。
ハイパーカミオカンデ共同研究グループにおいても、ハイパーカミオカンデ計画で期待される成果や最新の開発・準備状況について、複数の研究者が講演を行いました。特に、ハイパーカミオカンデ用に開発中の新型光センサーについて、詳細な性能評価を進めていることやそれを用いることによる検出器性能の向上をシミュレーションで見積もった結果などを報告し、活発な議論が行われました。
また、ニュートリノ研究の新たなる展開と題したシンポジウムの中でも、ハイパーカミオカンデが解き明かそうとしている素粒子の性質や宇宙の謎についての講演を行いましたが、多くの聴衆を集め本計画に対する研究者の関心の高さをうかがわせるものとなりました。
2015.2
研究会
ハイパーカミオカンデ国際共同研究グループ結成記念シンポジウムが行われました。
2015年1月31日千葉県柏市柏の葉カンファレンスセンターにて、ハイパーカミオカンデ国際共同研究グループ結成記念シンポジウム及び調印式が開催されました。
ハイパーカミオカンデ計画は、これまで日本で培われてきた高度なニュートリノ実験技術をもとにスーパーカミオカンデの約25倍スケールのニュートリノ検出器を新たに建設し、J-PARCの大強度ニュートリノビームと組み合わせる事により、「素粒子の統一理論」および「宇宙における物質の起源と進化の謎」に挑戦するものです。
このたび、ハイパーカミオカンデ計画を国際的に推進するための共同研究グループ結成、これを記念したシンポジウムを開催致しました。さらに、東京大学宇宙線研究所と高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所は、ハイパーカミオカンデ計画の具体化に向けた検討についての協力協定を交わすことを決定し、本シンポジウム内でその調印式も併せて行われました。
シンポジウムには、13ヶ国の代表者からなる国際代表者委員会や国際運営委員会を含むハイパーカミオカンデ国際共同研究グループのメンバー100名以上が出席しました。
TRIUMF研究所の小中教授の司会進行の元、初めに東京大学の塩澤教授がハイパーカミオカンデ計画の概要を、次にKEKの小林教授がJ-PARCニュートリノビーム施設について説明を行いました。次にクイーンメリー大学ロンドン校のLodovico教授から、ハイパーカミオカンデ計画の国際協力体制について説明があり、デューク大学のWalter教授から、Kamiokande実験以来のニュートリノ実験における国際協力の歩みについて講演が行われました。
KEK素粒子原子核研究所山内所長と東大宇宙線研究所の梶田所長が、ハイパーカミオカンデ計画構想の具体化に向けて協力して推進していく旨の覚書を取り交わしました。
そして京都大学の中家教授から、ハイパーカミオカンデ国際共同研究グループの結成が宣言されると、会場は大きな拍手に包まれました。
最後に、ハイパーカミオカンデ国際共同研究グループ全員で集合写真を撮影し、ハイパーカミオカンデ実験の実現に向けて協力して研究を進めていく決意を新たにしました。
研究会
第6回ハイパーカミオカンデオープンミーティングが行われました。
2015年1月28〜31日、東京大学柏キャンパスのKavli IPMUにて、ハイパーカミオカンデ研究者ミーティングが行われました。
国内外総勢120名以上の研究者が参加し、日頃の研究の成果を発表し、3日間に渡り熱い議論が交わされました。普段はテレビ会議などで各研究グループでの打ち合わせを行いますが、ミーティングは全員直接顔を合わせて意見交換ができる貴重な場です。
最終日には、宇宙線研究所で行われている光センサーの実験室の見学ツアーが行われ、新しい光センサーの検証実験の様子が紹介されました。