ハイパーカミオカンデ概要

ハイパーカミオカンデ計画は、東京大学と高エネルギー加速器研究機構を中核機関とする国際共同研究プロジェクトです。

現行のスーパーカミオカンデを凌駕する巨大水タンクと超高感度光センサーからなる超大型地下ニュートリノ観測装置とJ-PARC加速器ニュートリノビームの高度化により、ニュートリノのCP対称性の破れ(ニュートリノ・反ニュートリノの性質の違い)の発見や超新星爆発ニュートリノの観測、陽子崩壊の発見などを通して、宇宙の進化史や素粒子の統一理論の解明を目指します。

国際研究プロジェクトとして世界の研究者が協力し、2027年の実験開始を目指しています。

「素粒子」と「宇宙」を地下から見上げる

スーパーカミオカンデ装置による素粒子ニュートリノの変身(ニュートリノ振動)の1998年の発見を突破口に、素粒子理論の見直しをせまるニュートリノの性質が次々に明らかにされてきました。2011年には大強度加速器J-PARCで作られたニュートリノビームとスーパーカミオカンデを用いたT2K実験により、3つ目のニュートリノ振動モードも確認されました。全ての振動モードが確認された今、ニュートリノ研究はさらなる発見を目指し次のステージへ進みます。

ハイパーカミオカンデ実験では、これまで培ってきた高いニュートリノ実験技術をもとにさらに実験感度を向上させます。新たに建設する超大型地下ニュートリノ観測装置は、直径68m、深さ71mの円筒形のタンクに超純水を満たしたものです。タンクの体積は26万トン、有効体積は19万トンでスーパーカミオカンデの約10倍になります。タンクの壁には大型の超高感度光センサーが4万本取り付けられ、水中で発生するチェレンコフ光をとらえます。

この装置は、素粒子を観察する「顕微鏡」であると同時に、飛来するニュートリノを用いて太陽や超新星爆発を見る「望遠鏡」でもあるのです。

ハイパーカミオカンデ計画の実現により、今後も世界のニュートリノ研究をリードしていきます。

ニュートリノ研究はさらなる飛躍を目指し次のステージへ

日本の大型ニュートリノ実験の歴史はカミオカンデ実験から始まりました。その発展の歩みをまとめました。

カミオカンデ

1983~1996年

スーパーカミオカンデ

1996年~現在

ハイパーカミオカンデ

2027年観測開始を目指す

大きさ 大きさ 大きさ

19m直径 x 16m高さ

39m直径 x 42m高さ

68m直径 x 71m高さ

純水質量(うち有効質量) 純水質量(うち有効質量) 純水質量(うち有効質量)

4,500トン
(680~1,040トン)

※タンク(内層および上下外層)内の 純水質量は3,000トン

50,000トン
(22,500トン)

260,000トン
(190,000トン)

光電子増倍管 光電子増倍管 光電子増倍管

50cm直径/948個

50cm直径/11,146個

50cm直径/40,000個相当

主な成果・期待される成果 主な成果・期待される成果 主な成果・期待される成果
超新星爆発からのニュートリノの世界初観測および太陽ニュートリノの観測による、ニュートリノ天文学の創生 ニュートリノが質量を持つことを示す、ニュートリノ振動の発見
  1. ニュートリノと反ニュートリノの振動の違い(CP対称性の破れ)の発見と精密測定による宇宙の物質の起源の解明
  2. ニュートリノ天文学のさらなる発展
  3. 陽子崩壊の発見による「素粒子の統一」と「電磁力・弱い力・強い力の統一」の証明
主な受賞 主な受賞 主な受賞

2002年ノーベル物理学賞
小柴昌俊

2015年ノーベル物理学賞
梶田隆章

J-PARC加速器施設との連携

大気や太陽から飛んでくる自然ニュートリノに加え、茨城県東海村のJ-PARC加速器による大強度・高品質ニュートリノビームを用いて、ニュートリノのCP対称性の破れの発見を始めとするニュートリノの精密研究を行います。

ビームパワーの増強も合わせて、現行T2K実験の20倍の数のニュートリノの観測を見込んでいます。