先輩からの声

兼村 侑希

東京大学大学院理学系研究科 博士課程3年(2024年4月現在)

今までにないやり方で、これまで以上の研究成果を出す。

私が現在進めている研究は2つあります。 1つ目は Neural Network を用いた超新星背景ニュートリノ(SRN)の探索実験です。2020年7月からスーパーカミオカンデ(SK)でガドリニウム実験を開始しました。おかげでSKのSRNに対する感度が向上しましたが、さらにこの反電子ニュートリノの事象とノイズとの区別を効率よく選別するようなアルゴリズムが必要となっています。そこで私はニュートリノの信号事象とノイズ事象の区別を Neural Network という機械学習で行おうと考え、その研究を行っています。
2つ目はSKの水中ラドン濃度測定の自動化です。SKでは太陽ニュートリノ観測実験を行うために、その実験のノイズ事象となる放射線の1種であるラドンを極力取り除き、SK中のラドン濃度を監視する必要があります。その一環としてSKから水をサンプリングし、その水からラドンを放散させ濃度を測定します。この作業をPLC回路や自動装置を利用して、正確な測定を維持しつつラドン濃度測定をより簡潔に行えるようにしています。
どちらもこれまでに誰も試したことのない手法で研究を行うので非常にやりがいを感じています。

私は研究所から車で数十分程度の所にあるマンションで生活しています。交通面などにお いて多少不便ですが、SK という日本一の検出器を自分の手で動かしてデータを取得し解析 する事ができるので、宇宙物理の実験を本格的にやりたい人にとっては最高の研究環境で、 神岡でなければできない貴重な経験ができると思います。
ぜひ後輩のみなさまと一緒に、SK で日本唯一の実験と研究ができたらと思います。

三木 信太郎

東京大学大学院理学系研究科 博士課程1年(2022年4月現在)

誰もやったことのない試行錯誤が楽しい

私は主に2つの研究を進めていて、1つがハイパーカミオカンデ用に製造された光センサーの試験です。光センサーを暗室に入れて、微弱な光を当てたときの応答をテストしています。ハイパーカミオカンデの最も重要な構成要素のひとつである光センサーは検出器全体の性能を左右するものであり、それを調べるのはすごく面白いです。また、今調べている光センサーが数年後にはハイパーカミオカンデの底でニュートリノからの光を捉えているのかなと想像するととてもワクワクします。もう1つの研究が、スーパーカミオカンデでの大気ニュートリノ振動の解析です。2020年に検出器の水にガドリニウムを溶かしたことでよく見えるようになった中性子の情報を使って、ニュートリノをより精度よく観測することができないかと考えています。誰もやったことのないことなので試行錯誤の連続ですが、試したことの結果を見るときが楽しいです。

博士課程進学を機に研究所から車で20分くらいのアパートに引っ越し、修士時代にも増して神岡での研究生活を充実させていく予定です。研究所の周りはコンビニもないようなところですが、自然の中をあちこち探検していると小学生に戻ったような楽しさがあります。散歩中に近隣住民の方と立ち話をしたりと、田舎ならではのゆったりとした生活を満喫しています。

ぜひ多くの方と一緒に、スーパーカミオカンデ・ハイパーカミオカンデのポテンシャルを引き出す研究ができたらなと思います。

神長香乃

東京大学大学院理学系研究科 修士課程2年(2023年4月現在)

世界最先端の技術を用いた暗黒物質探索

私はXENON実験という暗黒物質(ダークマター)を探す国際実験に参加しています。実験装置は世界最大規模で、イタリアのグランサッソという山の地下に設置されています。神岡でイタリアの実験?と思われるかもしれませんが、実は以前神岡でも暗黒物質を探すXMASS実験が行われており、XENON実験にはXMASS実験で培われた知識や技術が沢山使われています。また、現在スーパーカミオカンデで使われているガドリニウムで中性子を捕まえる技術が、XENON実験にも導入される予定です。中性子は予想されている暗黒物質の信号と似た信号を作る邪魔者で、中性子による信号を判別する方法が必要とされてきました。この技術によって中性子を判別することで暗黒物質をより低ノイズな環境で探すことができ、発見に近づきます。このようにXENON実験は神岡研究施設における実験の協力を得ており、私も神岡の研究者の方々に教えを請いながら暗黒物質の発見を目指し研究に取り組んでいます。

最近は神岡に3、4週滞在し、東京の実家に1週間程度戻る形で生活しています。他にもイタリアや名古屋大学に出張したり、逆に神岡に出張してきた国内外の研究者と一緒に研究をしています。神岡は周囲に店などはなく物理学者だらけという特殊な環境で東京とは全く異なりますが、先生方や先輩、同期にすぐ相談ができ、研究に集中できる環境なので楽しいです。休日には富山や岐阜を観光して神岡での生活を満喫しています。

河内 弘輝

東京大学大学院理学系研究科 修士課程2年(2023年4月現在)

世界最先端の環境での研究

私は暗黒物質探索実験を行っています。暗黒物質は宇宙に多く存在するにもかかわらず誰も検出できていない未知の粒子です。私の研究はその暗黒物質の検出器を開発することです。そのためには放射線検出器や電子回路の知識、解析に用いる統計学やプログラミング、さらに理論的な観点では電磁気学や結晶学、シミュレーションなど様々な勉強が必要です。勉強して身につけなければならない知識や技術がたくさんあります。その全てを身につけることは1人では困難です。しかし神岡施設ではそれが可能になる環境が揃っています。先生、スタッフ方は世界最先端の素粒子宇宙物理学実験であるスーパーカミオカンデやXMASSを行ってきたプロ中のプロです。またその実験自体はここ神岡施設で行われてきたため設備も全て世界最先端の代物です。学生は大学問わず、国も問わずに様々な知識を持つ人が集結しており、教えてもらえることがたくさんあります。このような贅沢な環境を自由にいくらでも使えることが神岡施設の魅力だと考えています。大学院進学を考えているみなさんもぜひ一緒に神岡施設で研究してみませんか?ぜひお待ちしております。

併せて修士学生の生活についてお話します。修士学生は研究所から徒歩70 歩の宿泊棟に長期滞在しています。ご飯は朝昼晩に研究所の食堂で食べられます。神岡施設では学生でも使用できる車が用意されているので、週末は富山で外食したりしています。私は問題ないのですが、田舎の生活に耐えられない都会育ちの学生は定期的に実家に帰って英気を養っています。説明するとキリがないので説明会などでぜひご質問ください。とにもかくにも、入学前に考えていたほど生活は不自由ではなく非常に楽しいです。私はむしろ関東の実家に帰るのが面倒になる程です。

冨谷卓矢

東京大学大学院理学系研究科 修士課程2年(2022年4月現在)

とてつもなく繊細な物理事象の調査

ハイパーカミオカンデ実験に用いられる光センサーは、研究者と製造元が協力して研究開発されました。国内外の共同研究者と協力して2027年の実験開始に向けた準備を進めており、私はその光センサーに関する測定、性能評価を行なっています。測定装置は非常に小さ な信号を捉えるものであり、装置周辺などからのノイズ源になるものを排除していく必要があります。どのようにしたら綺麗な信号が測定できるかを考えて装置の改良をしています。また特に、自分が主に担当しているのは磁場の影響調査についてです。光センサーは地磁気などの小さな影響も受けるため考慮する必要があり、どのくらい影響を及ぼすのかを調査しています。何が原因で上手く測定できていないのかといった問題を考察することや、上手く測定をするにはどうしたら良いかなどを考えて測定していくことが面白いです。

私は普段千葉県に住んでいますが、2週間に一度神岡研究施設へ行って光センサーの作業を行なっています。作業には先生や先輩や同期、技術者の方や外国人の研究者が参加しています。行っている作業のことや測定について議論したりすることは、とても良い刺激となっています。また神岡施設での滞在の際には、先輩や同期と物理学のことからプライベートのことまでいろいろな話をしたりとても楽しく過ごしています。