先輩からの声

三木 信太郎

東京大学大学院理学系研究科 博士課程1年(2022年4月現在)

誰もやったことのない試行錯誤が楽しい

私は主に2つの研究を進めていて、1つがハイパーカミオカンデ用に製造された光センサーの試験です。光センサーを暗室に入れて、微弱な光を当てたときの応答をテストしています。ハイパーカミオカンデの最も重要な構成要素のひとつである光センサーは検出器全体の性能を左右するものであり、それを調べるのはすごく面白いです。また、今調べている光センサーが数年後にはハイパーカミオカンデの底でニュートリノからの光を捉えているのかなと想像するととてもワクワクします。もう1つの研究が、スーパーカミオカンデでの大気ニュートリノ振動の解析です。2020年に検出器の水にガドリニウムを溶かしたことでよく見えるようになった中性子の情報を使って、ニュートリノをより精度よく観測することができないかと考えています。誰もやったことのないことなので試行錯誤の連続ですが、試したことの結果を見るときが楽しいです。

博士課程進学を機に研究所から車で20分くらいのアパートに引っ越し、修士時代にも増して神岡での研究生活を充実させていく予定です。研究所の周りはコンビニもないようなところですが、自然の中をあちこち探検していると小学生に戻ったような楽しさがあります。散歩中に近隣住民の方と立ち話をしたりと、田舎ならではのゆったりとした生活を満喫しています。

ぜひ多くの方と一緒に、スーパーカミオカンデ・ハイパーカミオカンデのポテンシャルを引き出す研究ができたらなと思います。

柏木ゆり

東京大学大学院理学系研究科 修士課程2年(2022年4月現在)

神岡で世界の研究者と超新星爆発警報システムのアップグレード中

私はスーパーカミオカンデによる超新星爆発警報システムの開発チームに所属しています。スーパーカミオカンデでは2020年にガドリニウムを導入したことにより、超新星爆発で放出されるニュートリノの情報から爆発方向を決定する精度が向上しました。そこで開発チームでは、元々あった超新星爆発警報システムをアップグレードさせています。その中でも私は、世界各国の研究者が提案している様々な超新星爆発のモデルのシミュレーション結果をシステムに組み込む部分を担当しています。開発チームにはフランスから来ている研究者の方もいるので、週1回の進捗報告ミーティングは英語です。日本を拠点として様々な国の研究者の方と関われる点は神岡グループの魅力の一つだと思います。私は大学院から研究分野が変わったこともあり、覚えることはたくさんありますが、様々な人に助けられながら日々の小さな一歩を積み重ねています。

今のところリモートで可能な研究内容なので、東京の家(一人暮らし)と神岡の研究施設を数週間〜2ヶ月おきに行ったり来たりしています。神岡には先生や先輩や同期がいるので、研究上のちょっとした悩みが雑談で解決することもあるし、宿泊棟で出る食事がおいしいので毎回快適に過ごしています。日曜祝日は食事が出ないので先輩や同期と共用の車を運転して富山方面にランチ(今は黙食ですが)や買い出しに行くのが良い気分転換になっています。女性は少ないですが特に困ることはありません。

金島遼太

東京大学大学院理学系研究科 修士課程2年(2022年4月現在)

新世代大型検出器の観測を支えるエレクトロニクスの開発

私はハイパーカミオカンデに用いるエレクトロニクスの開発を行っています。ハイパーカミオカンデでは幅広い物理現象が観測対象であり、広い電荷測定範囲や高い測定精度を備えた光センサー信号処理エレクトロニクスが求められています。信号処理エレクトロニクスは3ヶ国で開発されており、私は各研究機関で光センサーの信号を再現できるような性能評価手法の開発をしました。この研究でハイパーカミオカンデの根幹である光センサーに触れることで、前人未踏の実験の実現をより身近に感じることが出来ました。その後、日本で開発しているエレクトロニクスの性能評価を行い、ハイパーカミオカンデの要求水準を目指して開発を進めています。ハイパーカミオカンデのような大型検出器のハードウェア開発は立ち上げ期の今しかできない貴重なことで、日々やりがいを感じながら研究ができています。

神岡研究施設のアクセスは決して良いとは言えませんが、神岡の唯一無二の研究環境を求めて国内外から多くの研究者が集まってきます。そのため神岡にいるだけで多くの実験や研究者と交流する機会があり、学びの尽きないこの環境を魅力的に感じています。また、 富山で新鮮で美味しいお寿司を食べて英気を養ったり、施設周辺の自然で四季を感じて気分転換をしたり、都会ではなかなか味わえない生活を過ごせています。

冨谷卓矢

東京大学大学院理学系研究科 修士課程2年(2022年4月現在)

とてつもなく繊細な物理事象の調査

ハイパーカミオカンデ実験に用いられる光センサーは、研究者と製造元が協力して研究開発されました。国内外の共同研究者と協力して2027年の実験開始に向けた準備を進めており、私はその光センサーに関する測定、性能評価を行なっています。測定装置は非常に小さ な信号を捉えるものであり、装置周辺などからのノイズ源になるものを排除していく必要があります。どのようにしたら綺麗な信号が測定できるかを考えて装置の改良をしています。また特に、自分が主に担当しているのは磁場の影響調査についてです。光センサーは地磁気などの小さな影響も受けるため考慮する必要があり、どのくらい影響を及ぼすのかを調査しています。何が原因で上手く測定できていないのかといった問題を考察することや、上手く測定をするにはどうしたら良いかなどを考えて測定していくことが面白いです。

私は普段千葉県に住んでいますが、2週間に一度神岡研究施設へ行って光センサーの作業を行なっています。作業には先生や先輩や同期、技術者の方や外国人の研究者が参加しています。行っている作業のことや測定について議論したりすることは、とても良い刺激となっています。また神岡施設での滞在の際には、先輩や同期と物理学のことからプライベートのことまでいろいろな話をしたりとても楽しく過ごしています。