ごあいさつ

スーパーカミオカンデからハイパーカミオカンデへ。
ニュートリノ研究は新たな段階に。

2022年4月より東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設の施設長を拝命いたしました。本施設は岐阜県飛騨市神岡町に位置しており、世界最大のニュートリノ・核子崩壊探索実験であるスーパーカミオカンデ装置を擁しています。さらに宇宙線研究所の役割となる共同利用・共同研究拠点の枠組みの中で、地下環境での宇宙・素粒子研究を行う複数の実験にも当施設は利用されています。当施設の研究教育活動に対する、行政、企業、団体、地域住民の皆様の、多大なご支援・協力にあらためて感謝いたします。また引き続きご理解とご協力をいただけたら幸いです。また夢を共有し、挑戦に参加する大学院生の参加を歓迎いたします。

1998年にスーパーカミオカンデ実験グループは、ニュートリノが質量を持つことを示すニュートリノ振動を発見しました。素粒子物理学の理解がひとつ進んだ大きな成果ですが、一方でこの発見によりニュートリノの性質やその自然界での役割の謎が増しました。発見により新たな研究課題が生まれたことになります。今ではニュートリノは素粒子と宇宙の進化を深く理解するための重要な鍵になると世界中の研究者に期待され、日本のみならず、アジア、ヨーロッパ、アメリカと世界中でニュートリノ実験が進行中であり、次世代実験の建設が行われています。本施設でも次世代実験となるハイパーカミオカンデ計画を推進しています。スーパーカミオカンデを凌駕する70メートルスケールの大きさの実験装置の建設は2020年に始まり、2027年の運転開始を目指して今後建設の大きな山場を迎えます。大型建設を成功させハイパーカミオカンデで素粒子と宇宙の大きな謎への挑戦を行っていきたいと考えています。またスーパーカミオカンデは超新星爆発から飛来するニュートリノなどに対する感度をあげたアップグレードが進行中です。超新星爆発のメカニズムの解明や、星形成の歴史の理解が期待されます。それ以外にも当施設を利用した、ニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊探索や暗黒物質直接検出などの推進と発見に向けた次期計画のための開発研究が進んでいます。スーパーカミオカンデやハイパーカミオカンデを確実に進めつつ、同時にその先を見据えた将来計画を考えることも今後必要になります。時間的にも研究分野的にも俯瞰した目で研究を推進していきたいと考えます。

神岡宇宙素粒子研究施設長

塩澤 真人