低エネルギーの反電子ニュートリノは陽子と反応した際、陽電子と中性子を発生する。陽電子の信号のみでは放射性バックグラウンドに埋もれてしまい反電子ニュートリノの信号を同定することはできないが、中性子を同時計測することによって、信号を同定することができる。本研究ではスーパーカミオカンデの 50000 トンタンクにガドリニウム(Gd)を溶解し中性子を捉える機能を付加させ、反電子ニュートリノを使った超新星ニュートリノ観測を実現させる。
最も主要な観測対象は、宇宙の始まりから起きてきた超新星爆発からのニュートリノ「超新星背景 ニュートリノ」である。超新星背景ニュートリノは未だに観測されたことがなく、本研究で世界初の観測を目指す。我々の銀河内で超新星爆発が起きた場合には、多数の反電子ニュートリノ反応事象とその5%程度の電子散乱事象が期待できる。本研究によって、反電子ニュートリノ事象を同定することができれば、方向性を持った電子散乱を使って超新星の方向決定精度を向上することができる。 また、後述するようにベテルギウスなどの超近傍星爆発においては、その爆発を事前に予知することができる。
本研究では、反電子ニュートリノ反応の際に発生する陽電子と中性子を同時計測することによって、真の反電子ニュートリノ反応を同定する。中性子の信号を捉えるためにガドリニウム(具体的には硫酸ガドリニウム)をスーパーカミオカンデタンクに溶解させる。 硫酸ガドリニウムを溶解するための装置、前処理して純化する装置、溶解してスーパーカミオカンデタンクに蓄えられた水を循環しながら純化する装置を建設し、観測を開始する。