陽子崩壊探索にによる素粒子大統一理論の直接的検証

この研究では、スーパーカミオカンデ装置を用いて、原子核中の陽子がより軽い粒子である 陽電子(電子の反粒子)と中性パイオン粒子に自発的に崩壊する現象を探索するものである。 この現象は、素粒子の標準理論の枠内では見つからないとされるもので、発見されれば、 標準理論を越えた、新しい素粒子理論(大統一理論と呼ばれる)の発見へとつながると 期待されている。この新しい理論は、2つの種類の素粒子、クオークとレプトンを1種類 の粒子へと統一すると同時に、素粒子の間に働く3種類の相互作用(電磁気力、弱い力、 強い力)を1種類の相互作用に統一するものである。この新しい理論は、ニュートリノが 非常に軽い質量(電子質量の7桁以上下)を説明すると期待され、また、宇宙が粒子から 構成さえ、反粒子が少ないという現象とも密接に関係している可能性もあり、陽子崩壊探索 実験の大きな動機となっている。


図1、陽子崩壊のファインマン図の一例。未知のゲージボソンX、Yにより、クオークとレプトンの 遷移が可能になる。大統一理論では、クオークとレプトンが1種類の素粒子に統一されている ことの現れである。

陽子崩壊のファインマン図の一例を上図に示す。大統一理論で予言される未知のゲージボソン であるX、Yがクオークとレプトンの遷移を引き起こしている。 大統一理論では、クオークとレプトンが1種類の素粒子に統一されている ことの現れである。


図2、陽子(p)が崩壊により、陽電子(e+)とパイオンができたところ。 パイオンは直後に2つのガンマ粒子に崩壊する。

スーパーカミオカンデ装置の水槽内での陽子(p)の崩壊現象を上図に表す。 崩壊によりできる陽電子(e+)とパイオンは、運動量保存から反対方向へ進み、 パイオンは2つのガンマ粒子に崩壊する。結果として、円錐状の光が3つ放出され、 この光を11146本の高感度光センサーで検出することにより陽子崩壊現象を観測する こととなる。下図にスーパーカミオカンデ装置で見た陽子崩壊のモンテカルロ シミュレーションの一例を示す。


図3、陽子が陽電子(e+)とパイオンに崩壊する現象を、スーパーカミオカンデ検出器で シミュレーションしたもの。図は円柱形の水槽の内側を展開したもので、 水槽は高さ36メートル、半径17メートル であり、12階建てのビルが収まる大きさである。 小さな点一つ一つが直径50cmのPMT(光センサー)に対応し、色は検出した光の量を表す。 よく見ると、右上に光のリングが一つ、左下に2つ検出されているのがわかる。

平成16年度末までにわかったことは、

1、陽子崩壊の検出効率は41%である。
2、大気ニュートリノによるバックグラウンドは421日あたり0.2事象と見積もられ、ほぼバックグラウンドフリーでの探索が可能であることがわかった。
3、421日の観測データの中から陽子崩壊と矛盾ない事象を探したところ、一つもなかった。
4、以上の結果により、陽子の寿命の下限値1.5x10E33年が得られた。また過去の全ての スーパーカミオカンデ1910日分のデータにより、6.9x10E33年という世界最高の制限 が得られている。

今後は、 新しいエレクトロニクス による検出効率向上、バックグラウンドの低減により、 実験感度を向上していく。また陽子の崩壊モードはこれ以外にも何10とあり、それらの 探索も行っていく予定である。
更に興味がある方は、駒場で行った陽子崩壊の授業、 「素粒子の世界と陽子崩壊」 も参考にしてください。


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