Accelerator neutrino oscillation

T2K 実験はニュートリノのエネルギーをニュートリノ 振動が最大となるように調整しました。これにより、 ニュートリノ振動の効果が明確に見えるようになり ました。


T2K 実験におけるμニュートリノ観測の結果。 上図黒実線は振動のない場合に期待されるエネルギー 分布。●が観測結果、赤実線が振動を仮定した場合 のエネルギー分布。下図はデータを振動がない場合 の予測で割った場合の比率。600MeV程度の事象がほぼ なくなっており、ニュートリノ振動の特徴的な形と なっている。

電子ニュートリノ出現のエネルギー分布。振動確率 が最大となる600MeV付近の事象が最も多くなって いる。
T2K 実験開始時には、ニュートリノ振動パラメータ の一種、3つの混合角のうち、二つまでは測定され ていましたが、1つθ13が0なのか、有限の値を 持つかわかっていませんでした。 θ13が0以外の値を持つと、T2K実験では μニュートリノが電子ニュートリノに変化する 「出現」が確認できることが期待されました。 実験を始めた1年後の2011年には電子ニュートリノ 出現の兆候をとらえることができ、現在ではθ13 が当初の予想よりもかなり大きいことがわかりました。 また、別の振動パラメータθ23の測定も世界最高の 精度を達成しています。 θ13は原子炉反電子ニュートリノを用いた実験でも 測定可能ですが、こちらの結果とは若干違う値と なっており、ニュートリノと反ニュートリノで 振動に違いがある可能性がでてきました。 これは、電荷・パリティ(CP)対称性が破れている 可能性を示唆しています。
ニュートリノ振動パラメータ測定結果。
T2K実験が混合角にもっとも強い制限を
与えている。
CP 非保存パラメータの許容領域。
0と±πがCP 保存。-3/2π 付近が、データを もっともよく再現している。
ニュートリノ振動で調べることができるCP対称性 の破れは、現在の宇宙に物質だけが残った理由を 解明の糸口になると期待されています。 T2K 実験では加速器でニュートリノだけでなく 反ニュートリノを作ることもできるので、 反ニュートリノの振動とニュートリノの振動を それぞれ測定する実験が続けられています。 しかし、まだ観測された事象数が不足しており、 結論が出ていません。 加速器の運転を単に継続するだけでなく、 スーパーカミオカンデの解析をさらに改良し、 ニュートリノと反ニュートリノの振動の違いを 調べることで、CP 対称性の破れの解明に近付く ことを目指しています。 CP の破れを検証することはなかなか困難で、 T2K 実験だけでは確定することができないかも しれません。しかし、ハイパーカミオカンデが 稼働すれば、現在の十倍以上の事象数を同じ 実験期間で観測することが可能となるため、 ハイパーカミオカンデの早期開始も重要です。 ハイパーカミオカンデの解析手法は、スーパー カミオカンデの解析手法の延長となるため、 スーパーカミオカンデにおいてより良い解析 手法を開発してゆく必要があります。 T2K実験のデータ解析に必要となるスーパー カミオカンデのデータ解析用ソフトウェア は、 大気ニュートリノ解析用 と共通する部分が 多く、その開発は双方の精度向上に役立ちます。 また、今後は事象数が大きくなることで統計誤差 は小さくなり、系統誤差が問題となります。 特に、今後は ニュートリノ・原子核散乱 の不定性が主要な系統誤差要因になると考えら れています。 よって、ニュートリノ・原子核散乱の理解を 深めることはこれまで以上に重要となるため、 これらの研究も同時に進めています。