Neutrino-nucleon/nucleus scattering experiments

近年の高統計、高精度なニュートリノ振動実験において ニュートリノ・原子核散乱の不定性がニュートリノ振動 解析の主要な系統誤差となってきました。 これは、そもそもニュートリノ・核子散乱の理解が不完全 であること、原子核内の(束縛された)核子の取り扱いが 難しいことの二つの理由があります。 ニュートリノ・核子散乱やニュートリノ・原子核散乱の 実験は1960年代から80年代にかけて行われました。 しかし、これらの実験は統計誤差や系統誤差が大きく、 反応の定性的な理解には役立ちましたが、現在求められる 精度で反応を理解するには不足があります。 これらの課題に挑むため、近年、高精度のニュートリノ ・原子核散乱実験が国内外で行われています。 これまで、原子核内の単一核子との反応に注目してた ところ、シミュレーションとデータに解離が見られる ことがわかりました。 現在は、この解離が複数核子とニュートリノの散乱に よるものではないかと推測されています。 最近の大半の実験では、単一核子との散乱なのか、 複数核子との散乱なのかを、観測データから区別する には、検出器の精度が不足しています。 今後の実験では、単一核子との散乱なのか、複数核子 との散乱なのかについて、実験的に調べることが重要 となっています。

T2K near detectors

T2K 実験では、J-PARCの敷地内にニュートリノを測定 する前置検出器が設置され、ニュートリノ反応を観測 しています。 前置検出器には、主にニュートリノの方向を測定する ために設置された INGRID と呼ばれる検出器と、 スーパーカミオカンデとほぼ同じエネルギー分布を持つ ニュートリノを測定するために設置された ND280 と 呼ばれる検出器の2種類が設置されています。 また、最近では WAGASCI と呼ばれる検出器も新たに 設置されました。 これらの検出器で得られたデータを用いて、 ニュートリノ・原子核散乱の解析を行っています。 また ND280 については、検出器アップグレードの 計画も進められており、数年以内にはより性能の 高い検出器となる予定です。

INGRID detector ND280 detector complex

Ninja experiment

Ninja 実験は、T2K 前置検出器と同じ実験ホール内に ニュートリノが反応する標的(炭素、水、鉄など)と 原子核乾板と呼ばれるフィルムを交互に配置して、 ニュートリノ・原子核反応によって生成した粒子を 精密に測定しようとする実験です。 原子核乾板を用いると、他の検出器よりも低い エネルギーまで粒子の飛跡を検出することが可能と なり、ニュートリノ・原子核散乱の精密な理解に 役立つことが期待されています。

特に、他の検出器では観測が困難な低エネルギー の陽子の精密観測によって、二つ核子が同時に反応 する「二核子散乱」を実験的に検証を目指します。 これ以外に、T2K実験で重要な、擬弾性散乱や単一 パイ粒子生成反応の精密測定を、複数の標的原子核 において行います。 これらのデータと理論模型の比較を通して、適切な 模型を選択、パラメータを最適化、系統誤差の低減 を目指して研究しています。 を

Other experiment

米国では、さまざまな原子核とのニュートリノ反応を 調べようとする MINERνA 実験や、液体アルゴンTPC と呼ばれる検出器を用いる MicroBooNE 実験など、 複数の実験が行われています。これらの実験グループ の出版されたデータも用い、反応の理解を深め、 系統誤差を減らすための研究を行っています。