ハイパーカミオカンデ用エレクトロニクス・データ収集システムの開発

水チェレンコフ型検出器であるハイパーカミオカンデのデータ 収集システムは、光センサーである光電子 増倍管が検出した光の到達時間と量を正確に記録し、 解析できるように記録することができなければなりません。


ハイパーカミオカンデにおいては、改良された光電子増倍管 を用いる予定です。この光電子増倍管は光検出能力が約2倍 にとなり、光検出時間の精度もほぼ倍になっています。
よって、この性能を最大限に引き出すことのできる信号処理 用の電子回路が必要となります。 光検出の時間精度が高まったと同時に、光電子増倍管からの 信号波系が短くなり、信号の最大波高(最大電圧)が高くなり ました。さらに、信号を伝えるケーブル長さも、スーパー カミオカンデのmから、後述の事情により20mとなり ました。これより、ケーブル中での信号減衰も小さくなり 信号波高を大きくすることが可能となりましたが、最大波高 はさらに高くなりました。特にμ粒子が検出器内 を通過した場合など、エネルギーの大きなμ粒子は光検出器 は数千個を光を検出、数十ボルトという非常に大きな信号を 生成する可能性があります。一方、低エネルギーの太陽 ニュートリノなどでの事象で、光電子増倍管が生成するのは 数 mV の信号となります。また、信号の時間精度は1ns 程度となります。この信号を正確に記録するための信号処理 用電子回路の開発を行っています。

光電子増倍管は5kHz程度で常時ノイズを出しています。 ハイパーカミオカンデにおいては、これらのノイズも全て 記録、計算機においてソフトウェアで処理することで、ニュー トリノなどの記録すべき事象かどうかを判別する予定です。 超新星爆発が起きた場合、ニュートリノが大量に観測される ことが期待されます。ベテルギウスなど超近傍の超新星が 爆発した場合は、その事象数は10秒間で数百万をこえる と予想されていますが、こういった場合にも必要なデータを とりこぼすことなく記録できるシステムとしなければなり ません。
当然ですが、光の到達時間測定のための「基準」は、全て の信号処理回路でそろえられている必要があります。現在、 1枚の信号処理回路基板で24本の光電子増倍管の信号を 処理することを予定しており、2000枚の基板を 百ピコ秒よりも良い精度で同期させるための信号分配シス テムの開発も行っています。このシステムはGPS/GNSS から の時間も同時に配布、観測された事象が「いつおきたか」 を正確に記録することを可能にするための機能や、システム 全体の状態を監視する機能も持つ予定です。 これらの電子回路や光電子増倍管を駆動するための高電圧 電源は、スーパーカミオカンデにおいては全ての光センサー に70mのケーブルをつけることで、検出器タンクの上に設置 することを可能としました。しかし、ハイパーカミオカンデ においては、タンク外にこれらを設置しようとすると、 検出器が大型化したことから、150m から 200m の ケーブル が必要となり、信号が大きく劣化してしまいます。さらに、 ケーブルの重量も無視できないものとなり、検出器の構造 にも影響を与えてしまいます。よって、今回は電子回路等 を検出器タンク内、光電子増倍管のそばに設置することを 計画しています。これにより、ケーブル長さは20m程度まで 短くすることが可能となります。しかし、検出器内は最大 で8気圧程度の圧力がかかるため、耐圧防水ケースに収容 しなければなりません。また、ケーブルなどはケースから 取り出さなければならないため、これらを貫通させるため のフィードスルも必要となります。現在、これらの研究と 開発も行っています。
当然ですが、タンク内に設置すると 修理などもほぼ不可能となります。このため、全ての回路 基板などは、10年以上故障せずに安定稼働するものとしな ければなりません。こういった点も考慮した機器の開発を 国内外の研究グループとともに行っています。