【論文紹介】暗黒物質候補 Axion-like particles および Hidden photon の探索 2019年4月24日

現在の素粒子物理学の標準理論は十分でないと考えられており、それを拡張する様々な理論が提唱されています。それら理論の多くで、Axion-like particles (ALPs)や暗黒光子 Hidden Photon (HP)等の新粒子が予言されています。ALPsやHPはまた、暗黒物質の正体ではないかと注目されています。

暗黒物質の候補としては数十GeV/c2からTeV/c2の質量を持つWIMPsが有力視され、XMASSをはじめとする直接探索実験や加速器を使った実験で探索されています。しかし、WIMPsが存在する明確な兆候は未だ見つかっていません。ALPsやHPは、1MeV/c2以下の軽い質量を持ち、物質と反応する確率がWIMPsよりさらに低いなどの特徴を持ちます。暗黒物質の謎を解くには、WIMPsに加え、ALPsやHPの様な他の候補にも目を向けた広い視野が必要です。

XMASSグループでは、2013年から2016年にかけてXMASS-I検出器で得られた約800日分のデータから、ALPsとHPの信号の兆候を探しました。これらの粒子は、非常に低い確率ですが、物質中で光電効果に類似した反応を起こしその質量と同等のエネルギーを電子に付与します。この反応がXMASS-I検出器の液体キセノンシンチレータ中で起こると、図1のようなピークを持ったエネルギー分布が観測できるはずです。

図1: HPの光電効果類似反応が起きた場合、XMASS-I検出器で期待されるエネルギー分布。色の違いは、それぞれ、HPの質量が50,70,90,110keV/c2の場合を示しています。

図2に実際に観測されたエネルギー分布を示します。観測されたデータは放射性不純物に由来するノイズ事象の期待値とよく一致しており、図1のような有意なピークは見られませんでした。この結果をもとに、ALPsおよびHPの反応しやすさを示すパラメータgAeとα’/αに対し、 図3赤線に示す制限を与えました。ノイズ事象の発生メカニズムを究明しその影響を高い精度で評価したことにより、XMASSグループの前回の測定結果と比べ大きな感度向上を達成しました。今回の結果は、ALPs・HPの質量が40〜120keV/c2の範囲において、これまで行われた実験の中で世界最高感度の制限となっています。

図2: XMASS-Iで観測されたエネルギー分布。黒点が実際のデータ、色付きのヒストグラムが予想されるALPsおよびHPからの信号、およびその他のノイズ事象を表しています。
図3: ALPs(上)およびHP(下)に対する実験的制限。線より上の領域を排除しています。 赤線が本論文の結果。黒線はXMASSの前回の測定結果。その他の実験で得られている制限を合わせて示しています。水色点線は天文学的観測による間接的な制限です。その感度が低くなる数十keV/c2付近の質量領域に、XMASSはより強い制限を与えることに成功しました。