XMASS実験装置の改修 2014年6月26日

XMASS実験は、液体キセノンを用いたダークマターの探索実験です。ダークマターの存在は銀河の運動等の観測により予想されていますが、物質との反応が非常に小さい為、未だにその正体を解き明かすことができていません。ダークマターを捕えるには低放射線バックグランドのとてもクリーンな検出器が必要です。XMASS実験装置の建設に当たっては、すべての材料のバックグランドが、実験に支障の無いように素材選びに知恵が絞られました。

XMASS実験は2010年から試運転をおこないましたが、その結果、検出器を構成する素材が予想外に多くのバックグランドを含んでいることが判明しました。 詳しい調査の結果、光電子増倍管の石英窓と本体を接合するために使用した少量のアルミニウムの中に、自然に含まれる量に近い放射性元素(ウラン)が含まれていることが判明しました。この他にもバックグランド源と考えられる候補を絞り込みました。

そして,バックグランドをより詳細に理解し、そして更に高感度な測定を可能とするために、XMASS実験装置の改修作業を行いました。 この改修作業では、次のようなハードウェアの改造が行われました。
(1) 上で述べたアルミニウムの影響を最小限にするため、石英窓側面に超高純度のアルミを蒸着すると同時に、外側から無酸素銅のリングを取り付けた。
(2) XMASSの光電子増倍管の死角にあたる部分で生じた光、例えば XMASSの光電子増倍管とそれを支える構造物の間で発生した光が、隙間を縫って,迷光として検出器内に入っていた。この迷光をカットするために、薄い銅板を取り付けた。
この他にも、表面に付着した放射性元素を洗浄する作業(銅の電解研磨、石英の酸洗浄)を行っています。

XMASS実験が発見しようとしている暗黒物質は非常に希な事象であるため、このような加工や洗浄の作業中の環境にも細心の注意が払われました。
例えば、空気中の塵や埃には、バックグランドの源となる放射性元素が含まれているため、作業する部屋全体をクリーンルーム化して、本当に「塵1つ無い環境(CLASS1)」を整えて、作業を行いました。

更に、空気中にはラドンという放射性の気体が極微量含まれるのですが、それを除去した空気を送って、その中で改修作業が行われました。

この改修作業は2013年11月に無事完了しました。現在XMASSは順調にデータを収集しています。この改修作業によって、バックグランドをより深く理解できるようになり、従って、DAMA/LIBRA実験等が発見を主張している低質量の暗黒物質の領域を、非常に大きな統計量で調べ上げることが期待されます。また、XMASSはガンマ線やベータ線にも高い感度を持つため、Axionなどの未発見の素粒子に対する探索を、世界最高感度で推進することが出来ます。

これからのXMASS

XMASSグループでは、この新しく生まれ変わったXMASSでの暗黒物質やAxionなどの探索を推進しています。 しかしながら、大型加速器LHCの実験結果や、多くの理論予測によると、暗黒物質粒子は重く、その相互作用は非常に小さいと予測されています。あるいは、Axionのような粒子が暗黒物質ではないかとも考えられています。そのため、暗黒物質を発見するためには、現在のXMASSよりも更に高感度の検出器が必要であると考えられます。
また、暗黒物質探索は世界中との厳しい競争となっています。暗黒物質を発見し、その正体をより詳細に研究するためにも、現在よりも更に大型の検出器を用いて、高い統計量のデータが不可欠です。
そのため、XMASSグループでは次世代の暗黒物質探索装置、XMASS-1.5の開発にも着手しています。

現在のXMASS、将来の大型検出器XMASS-1.5。 今後もXMASSに注目です。