検出原理

液体キセノンはダークマターをとらえやすい

XMASS(エックスマス)実験は、液体キセノン(約-100℃)を詰めた検出器でダークマターを直接とらえます。

 

液体キセノン検出器には、次のような特徴があります。

(1)発光量が多い

(2)10トンクラスの大型化が容易

(3)液体、気体、固体の各相が利用できるため内部のバックグラウンドのもとであるウランやトリウムなどを極端に少なく出来る

 

ニュートラリーノのようなダークマターがキセノン原子核と弾性散乱する際にエネルギーの一部を落とし、液体キセノンが発光します。発光された光は液体キセノンを囲んだ多数の光電子増倍管で捕らえます。

 

一方、アクシオンの類似粒子やダークフォトン(下記「進んだ解説」参照)といった粒子は電子を散乱する現象を引き起こします。この場合も同様に液体キセノンが発光し検出することができます。

 

ダークマターの正体を知るには、発光量の分布などを頼りに分析できると考えられています。

 

ニュートラリーノが検出器内部で反応し、10keVのエネルギーを放出した場合の光の軌跡のシミュレーション

ニュートラリーノが検出器内部で反応し10keVのエネルギーを放出した場合の検出器のイベントディスプレイ。

白丸が光センサー。光を検出したセンサーが光を検出した時間に応じて色分けされています。丸の大きさが検出した光の大きさを表しています。

 

 

バックグラウンドの少ない”きれいな”検出器が必要

ダークマターからの信号は非常に稀で、なおかつ、非常に小さいエネルギーであるため、放射線バックグランドをいかに落としてエネルギーしきい値を下げるかにかかっています。

 

XMASSグループでは、この実験に特化した“極低放射能”光電子増倍管を浜松ホトニクスと共同で開発しました(図5)。この光電子増倍管は、効率良く液体キセノンからのシンチレーション光を検出するだけでなく、光電子増倍管自身に含まれるウランやトリウムが従来のものよりも2桁以上少ないものになっています。

 

また、キセノンは原子番号が54と大きいため、“自己遮蔽”が有効で、外部からのガンマ線バックグランドを大幅に減らすことが可能です。

 

進んだ解説

ダークマターの候補はニュートラリーノ以外にも様々考えられています。

これは、

(1) ニュートラリーノようなダークマターが原子核を跳ね飛ばす現象が今までのところ見つからないこと

(2) 加速器を用いた実験等からニュートラリーノの候補粒子が見つからないこと

(3) このダークマターのモデルでは説明しづらい現象が銀河のスケールで見えていること

等が他の候補を考える動機になってきています。

 

XMASS検出器はそういった他の候補の幾つかについても高い感度で探索することができます。
ここではその例を見てみましょう。

まず、アクシオンと呼ばれる粒子は有力な候補と考えられています。

アクシオンは、現在知られた素粒子物理学ではどうしても説明できない現象(中性子の電気双極子モーメントが非常に小さい事)をうまく説明することができるため、きっと存在するだろうと考えられています。

アクシオンの重さはゼロではありませんが、本当の重さは分っていません。ただし、その質量がある知られた範囲にあれば、ダークマターの正体である可能性があります。

 

さらにその類似粒子も考えられていて、それがダークマターである場合や、太陽の中の高温な環境の下で大量に作られている場合には、XMASS検出器で検出できる可能性もあります。XMASS検出器はこれらの粒子に感度が高く、重要な研究テーマになっています。

 

他にも、光子の仲間で、ダークフォトンもしくはヒドンフォトンと呼ばれる粒子がダークマターなのかもしれません。これはアクシオンやその類似粒子と同様に、軽くて極めて相互作用が弱い粒子(Super-WIMPs)の仲間です。ダークフォトンのうち比較的重い粒子(数十keV)は、ダークマターになる可能性についてこれまで実験的に調査されたことがなく、XMASS実験による、この候補の検証は世界初の試みとなりました(関連記事はこちら)。

 

他にも、ルミノスダークマター、電子を散乱するダークマター等、候補は幾つも考えられています。このような粒子はどれも電子を跳ね飛ばす現象を引き起こしますが、XMASS実験では電子を跳ね飛ばす現象のバックグラウンド(ノイズ事象)も少ないため、得意とする研究分野なのです。


XMASS検出器ではこのような利点を活かして、より広いダークマター候補を探索して行こうと計画しています。

 

▲ページトップへ