施設長より新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。日頃より皆様から寄せられておりますご支援に感謝いたしますとともに、新しい年が皆様にとって良い年でありますことを祈念致します。旧年は「コロナ」に悩まされた年でした。本年は以前のように皆様と自由に交流できる年になることを願っています。

スーパーカミオカンデ(SK)では、昨年から新たな試みが始まりました。それはスーパーカミオカンデ-ガドリニウム(SK-Gd)プロジェクトとよばれています。昨年の7月から8月にかけてレアアースの一種であるGdを0.01%の濃度でSKへ導入しました。SK-Gdの主要な目的は、宇宙の初期から起きてきた超新星爆発によって蓄積されたニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)を観測することです。

SKの先代にあたるカミオカンデは、1987年に大マゼラン星雲で起きた超新星爆発からのニュートリノを検出しました。1987年以降、世界では数多くの地下観測装置が建設されてきましたが、まだ、次の超新星爆発が我々の銀河系でも大マゼラン星雲でも起きていません。超新星爆発は太陽の8倍以上もの大質量を持つ星が、その最後に起こす現象であり、ひとつの銀河あたり30-50年に一度程度と予想されています。1987年から今まで34年間に一回も起きていなくても不思議ではありません。一方、宇宙全体に目を向けると非常にたくさんの超新星爆発が起きています。宇宙には約数千億個の銀河(小さい物も入れれば約2兆個とも言われています)があり、それぞれの銀河には約数千億から1兆個の恒星があります。これらのうちで太陽質量の8倍以上の大質量星の割合を考えると、現時点では1年あたり約1億個の超新星爆発からのニュートリノを私たちは受けていることになります。それが超新星背景ニュートリノです。皆さんの手のひらサイズに一秒間に数千個の超新星背景ニュートリノが通り抜けているはずですが、それをSKでとらえようというわけです。超新星背景ニュートリノをとらえるためには、他のノイズと区別して超新星背景ニュートリノ(具体的には反電子ニュートリノ反応)を同定することができる必要がありますが、そのためにGdをSKの純水に添加しました。(詳細は、こちらをご覧ください。)

ニュートリノ観測においては装置が大きければ大きいほど性能が良くなります。カミオカンデは「有効体積」(ニュートリノ観測に実際に使える体積)が約800m3でしたが、スーパーカミオカンデではそれが22,500 m3でした。そして、それを約8倍大きくし190,000 m3の有効体積をもつ装置「ハイパーカミオカンデ」(HK)が計画されてきましたが、昨年に建設予算が認められ準備が進められてきました。2027年観測開始を目指し、本年はアクセストンネルの掘削が始まります。HKではJ-PARC(東海村にある大強度陽子加速器施設)からのニュートリノビームと反ニュートリノビームの振動の違い(「CP対称性の破れ」という)をみることによって、宇宙の物質優勢の謎を解き明かすことが期待されます。J-PARCからのニュートリノビームを用いたニュートリノ振動実験は、SKでビームを受けるT2K(Tokai to Kamioka)実験として2009年から進められてきていますが、CP対称性の破れの兆候が見え始めています。HKによって確実な証拠を掴めると考えられています。神岡での研究の始まりは、核子の崩壊を捉え、力の大統一理論を証明することでしたが、まだ核子崩壊は見つかっていません。HKでは発見できるかもしれません。

このように2021年は神岡でのニュートリノ研究が更に躍進していく年です。そのためには引き続き皆様のご理解、ご支援が必要です。今後ともよろしくお願いいたします。

2021年元旦
施設長 中畑雅行

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