小柴昌俊先生の訃報に寄せて

神岡でのニュートリノ研究の創始者である小柴昌俊先生が老衰のため11月12日にご逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。

小柴先生は陽子崩壊の探索を目的として1983年にカミオカンデ実験を始められました。カミオカンデは3000トンの水タンクに1000本の大口径(50cm)光電子増倍管を取り付けた装置でした。陽子崩壊の発見には至りませんでしたが、実験開始後、装置がニュートリノを捉える可能性も秘めていることに気づかれ、装置の改良をおこないました。その結果、1987年には大マゼラン星雲でおきた超新星爆発からのニュートリノを捉えることに成功し、また1989年には太陽からのニュートリノも捉えました。これらの観測から、ニュートリノによって宇宙をみるという新しい学問「ニュートリノ天文学」が創始されました。こうした成果が認められ2002年にノーベル物理学賞を受賞されました。

カミオカンデで観測した大気ニュートリノ(宇宙線が大気中で反応して生まれるニュートリノ)では、ミューニュートリノと電子ニュートリノの数の比が予想からずれていること、観測した太陽ニュートリノが太陽モデルの半分ぐらいしかないこと、といった「問題」を観測していました。これらの問題の原因を探るためにカミオカンデの25倍の大きさを持つスーパーカミオカンデが提案され、1991年に建設を開始し、1996年から観測を開始しました。実はカミオカンデの観測が始まった頃、小柴先生は既に大きな装置の必要性を説かれていました。スーパーカミオカンデはカミオカンデがみつけた問題の原因が、「ニュートリノ振動」(ニュートリノが種類を変えること)であることを解明し、ニュートリノが質量を持つことを発見しました。これは梶田隆章先生の2015年ノーベル物理学物理学賞として高く評価されました。

ニュートリノ振動の研究は更に進展を続け、今では「ニュートリノの振動」と「反ニュートリノの振動」を比較することによって、宇宙になぜ物質があって反物質が無いのかを探る研究へと発展しています。そのためにスーパーカミオカンデの更に10倍大きい、ハイパーカミオカンデの建設が今年から始まっています。

このように小柴先生が神岡で蒔かれた種は大きく成長してきており、またこれからも進展していくことと思います。小柴先生に感謝し、我々もニュートリノ研究に尽力していく所存です。

神岡宇宙素粒子研究施設長 中畑雅行

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