施設長より新年のご挨拶

明けましておめでとうございます。日頃より皆様から寄せられておりますご支援に感謝いたしますとともに、新しい年が皆様にとって良い年でありますことを祈念致します。

スーパーカミオカンデ(SK)では昨年の6月から改修作業を行っています。SKは1996年から観測を始めましたが、今までにタンクの蓋を開けたのは、2001年、2002年、2005-2006年の3回のみでしたので、まれな機会であり、2006年以来12年ぶりのことです。改修の動機は宇宙の初期から起きてきた超新星爆発によって蓄積されたニュートリノ(超新星背景ニュートリノ)を観測することです。

SKの先代にあたるカミオカンデは、1987年に大マゼラン星雲で起きた超新星爆発からのニュートリノを検出しました。その成果は小柴昌俊先生の2002年ノーベル物理学賞につながったように高く評価されました。1987年以降、世界では数多くの地下観測装置が建設されてきましたが、まだ、次の超新星爆発が我々の銀河系でも大マゼラン星雲でも起きていません。超新星爆発は太陽の8倍以上もの大質量を持つ星が、その最後に起こす現象であり、ひとつの銀河あたり30-50年に一度程度と予想されています。1987年から今までの32年間に一回も起きていなくても不思議ではありません。一方、宇宙全体に目を向けると非常にたくさんの超新星爆発が起きています。宇宙には約数千億個の銀河があり、それぞれの銀河には約数千億から1兆個の恒星があります。これらのうちで太陽質量の8倍以上の大質量星の割合を考えると、現時点では1年あたり約1億個の超新星爆発からのニュートリノを私たちは受けていることになります。それが超新星背景ニュートリノです。皆さんの手のひらサイズに一秒間に数千個の超新星背景ニュートリノが通り抜けているはずですが、それをSKでとらえようというわけです。

超新星背景ニュートリノをとらえるためには、レアアースの一種であるガドリニウム(Gd)という物質をSKの純水に添加する必要があります。これによって他のノイズと区別して超新星背景ニュートリノ(具体的には反電子ニュートリノ反応)を同定することができるようになるからです。今回の改修作業ではGdを溶かすための準備として、タンクに止水補強を施しました。また、タンク内の配管の改良もおこない、今までの倍の流速で水を循環できるようにしました。また、不具合のある光電子増倍管の交換も行いました。改修の主要な作業は昨年の6月から10月中旬にかけて行われ、その後、超純水を給水してきました。12月中旬までに水位が37.5mまで達し、タンクを閉める前の最後の作業を始めたところで年末年始を迎えました。年明け後は作業を完了させ、1月末には満水になって作業が完了する予定です。作業完了後は、まず純水の状態でデータを取り始め、秋ごろかあるいは2020年の初めあたりにGdを溶解して、超新星背景ニュートリノの観測を始めたいと考えています。

これまで、SKは「素粒子研究」の分野で数多くの成果を上げてきました。1998年に大気ニュートリノの観測によりニュートリノが振動することを発見し、その成果は2015年に梶田隆章先生のノーベル物理学賞として高く評価されました。そして、2001年の太陽ニュートリノ振動の発見、2004年のK2K実験による人工ニュートリノによるニュートリノ振動の確認、2011年のT2K実験による第3の振動モードの発見と続きました。これらは、「素粒子ニュートリノ」の性質を探る研究でした。これからは「ニュートリノを使って宇宙を見る」という宇宙研究の分野でも成果があがるよう邁進していく所存です。

神岡ではSKの後継機「ハイパーカミオカンデ」(HK)を建設したいと考えております。HKはJ-PARCからのニュートリノビームと反ニュートリノビームの振動の違いをみることによって、宇宙の物質優勢の謎を解き明かすことができます。神岡での研究の始まりは、核子の崩壊を捉え、力の大統一理論を証明することでしたが、まだ核子崩壊は見つかっていません。HKでは発見できるかもしれません。

2019年は神岡でのニュートリノ研究が新たなフェーズを迎える年です。そのためには引き続き皆様のご理解、ご支援が必要です。今後ともよろしくお願いいたします。

2019年元旦
東京大学宇宙線研究所附属神岡宇宙素粒子研究施設長 中畑雅行

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