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スーパーカミオカンデについて

スーパーカミオカンデの歴史

神岡鉱山の歴史は古く、奈良時代から採掘が始まり、一時は東洋一の採掘量を誇っていました。神岡鉱山の地質は堅い片麻岩でできていて、巨大な空洞の掘削に耐えうる強度を持っていたことが、この地にスーパーカミオカンデを設置した理由の一つです。空洞の掘削は、1991年12月に始まりました。1993年には水槽上部のドームの掘削が終了し、続いて深さ40mの円柱状に掘り下げる工事が翌年1993年8月に完了しました。岩盤の圧力に耐えられるように、壁面には長い鉄骨を1m間隔で打ち込み、さらにコンクリートを吹き付けて強化しています。その後、ステンレス板を溶接でつなげることにより、タンクの建設が1995年の中頃に完成しました。

1995年6月からは、多くの研究者が参加して光電子増倍管の取り付け作業と電子回路へのつなぎこみが行われました。光電子増倍管は、最初3個組のモジュールに取り付けられ、さらに4つのモジュールは1つのフレームに組み上げられます。光電子増倍管は純水の中で使われるため、光電子増倍管やステンレスのフレーム、さらには1本70メートルのケーブルまできれいに洗浄されました。1万本を超えるチャンネルを間違いなく電子回路につなげていくのは、気の遠くなるような作業です。日中の取り付け作業の後に、信号のチェックが毎日深夜まで行われていました。こうした作業が研究者たちの手で行われ、 1995年の終りまで続きました。

光電子増倍管取り付け作業が完成したのは1995年12月。鉱山の外では雪が降り積もる中、スーパーカミオカンデ底部のマンホールが閉じられ、いよいよ純水の注入が始まりました。5万トンのタンクを満たすのに2か月以上かかり、この間ボートで光電子増倍管の表面を丁寧に掃除していきました。水が上面に達するころ、残った上面の端の部分の光電子増倍管をボートで取りつけ、最後に上面入り口を閉じて、ついにスーパーカミオカンデは完成しました。

1996年4月1日0時に多くの研究者が坑内で見守る中、スーパーカミオカンデの運転が開始されました。1998年には地球の反対側から飛来する大気ニュートリノの数が少ないことを示し、ニュートリノ振動の確たる証拠を世界に発信しました。これにより、スーパーカミオカンデ実験グループはこの年の朝日賞を受賞しました。翌1999年には世界初の長基線ニュートリノ実験K2Kがスタートしました。つくば市にあるKEKで人工的に作られたニュートリノを250km離れたスーパーカミオカンデに打ち込むというこの実験は、大気ニュートリノで発見されたニュートリノ振動を検証することに成功しました。さらにスーパーカミオカンデの快進撃は続きました。2001年にはカナダのSNO実験の結果と合わせ、太陽から来るニュートリノも振動していることを発見しました。

5年間の観測の後の2001年7月、不具合のある光電子増倍管が増えてきたため、タンクの水を排水して交換する作業が行われました。光電子増倍管を取り付け終わり、注水の最中の2001年11月にたいへんな事故が起きてしまいました。底面にある光電子増倍管が割れてしまったのです。光電子増倍管の中は真空のため、破損によりに大きな衝撃波が生じ、これが水を伝って他の光電子増倍管を連鎖的に破損するという事故が起きてしまいました。この事故により、内水槽の半分以上の光電子増倍管6,777本と、外水槽の光電子増倍管1,100本が壊れてしまいました。失望と悲しみで呆然とする研究者たちは、当時の戸塚施設長の即座の号令で我に返ります。「再建するぞ!」。研究者たちは、どうしたらこのような事故を防げるのか、年末年始を返上して必死に考え、実験を繰り返しました。その結果、破損を免れた5,182本の内水槽光電子増倍管を一つ置きに配置し直し、FRPとアクリルから成る衝撃波防止ケースを取り付けることにより再建を果たし、2002年10月に観測を再開しました。このような大事故から1年足らずで復旧した影では、全国から集まった学生ボランティアの活躍がありました。学生ボランティアのうち何人かは、のちに研究者として神岡の地に戻ることになります。

事故前の観測時期をSK-I、事故の後の観測時期をSK-IIと名づけました。再建によりK2K実験が再開され、最終的には人工ニュートリノを使ってニュートリノ振動を確認することができました。

光電子増倍管のガラスは、職人が一つ一つ手作りしています。SK-IIで観測を続けながら、光電子増倍管を元の本数に戻す準備は着々と行われていました。K2K実験終了後、2005年10月から2006年6月にかけて再度タンクは開けられ、完全再建作業が行われました。これにより、内水槽の光電子増倍管の本数は、SK-Iとほぼ同じ11,129本が取り付けられ、SK-IIIとして観測が再開されました。

さらに、2008年9月には、長期的に安定して観測を行うため、新たなエレクトロニクスを開発し、データ収集システムを一新しました。これ以降をSK-IVと呼んでいます。新しいシステムでは光電子増倍管の信号を全て取得することができ、これによりミュー粒子の崩壊でできた電子をみつける効率があがり、さらにニュートリノ信号から遅れて出てくる中性子信号を取り出すことが可能となりました。

2009年には、K2K実験よりも大強度のニュートリノビームを用いたT2K実験が開始し、2011年にはミューニュートリノが電子ニュートリノに変化するニュートリノ振動の信号を捕えました。これからもスーパーカミオカンデは、ニュートリノ振動パラメータの探索、ニュートリノを用いた宇宙物理、さらに陽子崩壊探索を続けて行きます。

SK-I

SK-I (1996年4月〜2001年7月)

SK2

SK-II (2002年10月〜2005年10月) 左下は衝撃波防止ケースを取り付けたPMT

No.3

SK-III, IV (2006年6月〜)

  SK-I SK-II SK-III SK-IV
データ取得開始 1996年4月 2002年10月 2006年6月 2008年9月
データ取得終了 2001年7月 2005年10月 2008年9月 継続中
衝撃波防止ケース なし あり あり あり
内水槽のPMT数 11,146 5,182 11,129 11,129
外水槽のPMT数 1,885 1,885 1,885 1,885
内水槽光電被覆率 40% 19% 40% 40%
エネルギー閾値 4.5MeV 6.5MeV 4.0MeV 3.5MeV