光電子増倍管

内水槽光電子増倍管


図1:スーパーカミオカンデ8インチ光電子増倍管
(PMT)の概念図

スーパーカミオカンデの内水槽で使われている光電子増倍管(Photo-Multiplier-Tube, PMT)は、カミオカンデのメンバーの協力の下で、浜松ホトニクス社によって開発された直径20インチのPMTである。カミオカンデで使われていたものより、更に改良がなされている。このPMTのサイズと形状は図1に示されている。光カソードはバイアルカリ(Sb-K-Cs)で作られており、有感領域の波長は300~600nmで、チェレンコフ光の波長に適合している。 図2にPMTの量子効率(Q.E.)を示す。図に見られるように、典型的なチェレンコフ光の波長(=390nm)での Q.E.は22%である。

 


図2:スーパーカミオカンデで使用されているPMTの
量子効率。横軸は入射光の波長。

このPMTは受光面積が広いので、ベネティアン-ブラインド(板すだれ)型のダイノードが使われている。しかし、受光面積が 大きいために、光電子の移行時間が長くなり(約100nsec)、移行時間の分散も大きくなる。また、この型のダイノードは他と比較すると二次電子の収集効率も小さい。で、一連のブリーダー抵抗値を良い時間応答と収集効率が得られるように最適化した。この最適化の結果として、電圧の分配比が8:3:1...:1 となる11-段の電圧分配が採用され、カソードと第一ダイノードの間に三種類の集電子用メッシュ板を挿入する ことになった。

 


図3:スーパーカミオカンデで使用されている
PMTの1光電子に相当する信号分布。

収集効率の平均値は70%以上である。図3に示したように、光電子1個(1p.e.)に対応する分布のピークがはっきりと見られる。移行時間の分散はおよそ2.2nsecである(図4)。太陽ニュートリノなどの低エネルギー事象のデータ解析にとって、この1光電子を見る能力があること、良い時間分解能を持っていることは重要である。 なぜなら、PMTに到達する光子数は一般的には1個であり、時間分解能はニュートリノ 反応の起点(vertex)再構成に影響する。

 


図4:スーパーカミオカンデで使用されている
PMTの時間分布。

図5は運転開始一年間におけるエレクトロニクスの閾値以上のダークノイズ(暗電流によるノイズ)頻度である。1996年3月以降は、約3.1kHzで安定している。ダークノイズによって偶然に信号を出す PMT数は、50nsecの時間窓に約2つと見積もられる。このダークノイズ頻度はわれわれのモンテカルロ疑似実験のプログラム中でも 考慮されている。

 

PMT用の高電圧システムは、分配器(A933K)、制御装置(SY527)、CAEN社のインターフェースモジュール(V288)より成る。高電圧の値は、同一の利得(ゲイン)が得られるようにそれぞれのPMTに対して設定されていて(詳細は他節)、全てのチャンネルについて10分毎に モニターされている。

 


図5:スーパーカミオカンデで使われている
PMTのダークノイズ頻度の時間経過。

外水槽光電子増倍管

タンク内の外側部分の外部検出器で使われている PMTは 8-インチの浜松R1408で、それぞれに60cm平方の波長変換板が付属している。波長300nmと400nmの間の光子は波長変換剤に吸収されて、そのうちの 55%はより長い波長で等方的に再放出される。

 

衝撃波防止ケース


図6:衝撃波防止ケース

1つのPMTが破損して生じた衝撃波により、多数のPMTが連鎖して破損するという事故が2001年に発生した。再開後の実験では、たとえ1つのPMTが破損したとしても、衝撃波を生じて連鎖的に破損することがないよう、すべての内水槽PMTにカバーをとりつけた。カバーは、受光面がアクリル製で、後ろの部分はFRP(ガラス繊維強化プラスチック)でできている(図6)。アクリルカバーは、350nmの波長の光に対して96%以上の透過率があり(図7)、光検出に対するカバーの影響はほとんどない。


図7:アクリルカバーの光の透過率