単一光電子の出力電荷分布

前節ではPMTの相対的利得のみ議論された。本節では、絶対的利得、特に単一光電子での絶対的利得の測定法について述べる。われわれが得る電荷情報は、ピコクーロン単位のエレクトロニクスの出力だけである。この電荷の値から光電子数を得る方法を知らなければならない。単一光電子での電荷分布がそのために使用される。

 

方法はニッケルによる較正と同じことである。なぜならニッケルによる較正では、各PMTが観測する光電子数はほとんど1である。図1に出力信号があるPMTでのピコクーロン単位の電荷分布を示す。この分布の平均値は2.055ピコクーロンで、これが単一光電子に相当する。

図1:ニッケル較正において出力信号のあるPMTの電荷分布。0近くの大きな突起は光電子が第一ダイノードをすり抜けた場合に起る。

検出器の上下対称性を調べる目的で、1光電子の出力信号を得る割合で定義される「占有率」を用いる。詳細は論文リストに掲載されているY.Koshioの博士論文のAppendix B.2を見られたし。図2に、タンクの横壁部の各層に属するPMTの平均の占有率を層毎に図示した。この図から、占有率は、他のPMT表面での反射が原因で上方部と下方部の層が中央部より高いように見えるが、分布の形は上下対称である。更に、観測データはモンテカルロの疑似データと矛盾しないことを確認した。この結果は太陽ニュートリノの昼夜効果の解析にとって極めて重要である。

 

注:図2に高い占有率の層があるが、これは、それらの層に属するPMTが他と比較して製造年が古く特性が異るためである。これらのPMTは、相対的利得を合わせても、1光電子の検出効率は異っている。その違いは平均20%で、エネルギー決定においては 補正されている。

図2:タンクの横壁部の各層に属するPMTの平均占有率。白い四角は古いPMTで、他と特性が異る。