エネルギー較正

+エネルギー較正  +ニッケルのガンマ線源    +ミュー粒子崩壊

精密なエネルギー較正はスーパーカミオカンデの重要な特長の一つであり、太陽ニュートリノ測定にとって不可欠である。 ここからの節で、エネルギー較正の3つの方法が述べられる。LINAC(線型加速器)からの単一エネルギー電子を使う方法[本節]、 われわれがニッケル較正と呼んでいる放射線源を使う方法 [次節]、そして停止ミュー粒子の崩壊で生ずる電子事象を使う方法[次次節]である。

LINAC(線型加速器)

太陽ニュートリノのエネルギースペクトルが関係する解析のためには、エネルギーの絶対値の系統的誤差を1%以内に抑える必要がある。スーパーカミオカンデでは精密なエネルギー絶対値の較正にはLINAC が使われる。LINACの利点は電子エネルギーが単一にそろっていて、太陽ニュートリノが関わるエネルギー領域、5~15MeV、の全域を実現できることである。次節で述べるニッケル較正と比較したときの利点は、電子を直接使って較正ができることである。ちなみに、スーパーカミオカンデでは太陽ニュートリノの検出はve→ve散乱の電子信号によってなされる。更なる利点としては、LINACの細く絞られた電子ビームを使って、電子事象の精密な位置や方向の較正ができることである。

LINAC較正システムの概観は図1に描かれている。このLINACは三菱のモデルML-15MIIIで、本来は医学用のものである。ビームパイプは10-4トル以下の真空に引かれ、ビームの好みのサイズと運動量がコリメータと磁石によって得られる。スーパーカミオカンデのタンク上蓋には、-X軸に沿って2.1mごとに開閉可能な穴の溶接がなされている。これらの穴を通して鉛直のビームパイプを検出器中に挿入する。ビームパイプの長さは可変であるから、結局内部検出器のいろいろな場所で LINAC較正ができることになる。ビームの強度は、ほとんど全ての事象が1個の電子になるように、バンチ当たり平均 0.1個の電子となるように調節される。そのビームバンチの時間幅は2secで、最大の繰り返し速度は60Hzである。図1のように、トリガーカウンタやベトーカウンタとして働く複数のプラスチックシンチレータがビームパイプ終端に置かれている。

図1: LINAC 較正システムの概観図。

ビームパイプを通って来る電子のエネルギーはゲルマニウム検出器で測定される。ビームエネルギー決定の系統的誤差を推定するために、ゲルマニウム検出器で測った運動量と磁石1(magnet 1)の磁場強度との関係が用いられる。図2はその一例で、測定された運動量は直線で合わすことができ、直線からのずれは 0.3%以下である。
LINAC の仕様は表1にまとめられている。LINAC較正の結果、すなわち位置、角度、およびエネルギーの較正については他所で述べられている (例えば、 論文リスト にある Y.Koshio 博士論文、69ページ)。

図2: ゲルマニウム検出器で測定された運動量と magnet 1 での磁場との関係。測定点は直線で近似できる。
エネルギー範囲 5~16 MeV
強 度 ~0.1 electrons/bunch
(adjusted by the intensity of electron gun)
バンチ数 up to 60 bunches/sec,
typical 10~30 bunches/sec
ビームエネルギーの分散 ≦±0.3%
ビームサイズ ~10-7torr in accelerator tube
真空度 <10-4torr in beam pipe
表1: LINAC の仕様