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研究内容

超新星背景ニュートリノの探索(SK-Gdプロジェクト)

宇宙に漂う超新星爆発の残骸の歴史的証拠

超新星爆発が起きる時に放出されるニュートリノは、1987年に世界で初めてカミオカンデ実験で観測されました。(こちらをご覧ください。) それ以降われわれの銀河付近で超新星爆発が起こっていないため、超新星爆発時のニュートリノは観測されていません。

しかし、宇宙空間には、宇宙が誕生してから現在までの超新星爆発によって放出されたニュートリノが漂っていると考えられます。現在宇宙には、 10の20乗個(1兆個の1億倍)の恒星があり、そのうちの0.3%、つまり約10の17乗個(兆個の10万倍)の星は超新星爆発に必要な太陽の8倍以上の質量を持っていて、超新星爆発を起こしてきたと考えられています。

誕生以来の宇宙に蓄積されてきたニュートリノを検出し、観測することによって、星々が作られてきた歴史を探ることができます。さらに、超新星爆発は、ヘリウムよりも重い重元素が生まれた源であり、われわれ自身を構成している物質の起源をも探ることになります。

検出のための新たな試み

私たちの身の回りに漂う超新星背景ニュートリノの『流束』は、1秒間に1平方センチメートルあたり数十個と見積もられています。これは、高いエネルギーの太陽から放出されているニュートリノが600万個であるのに比べると、非常に少ないと言えます。スーパーカミオカンデでは、超新星背景ニュートリノからの信号が、1年間に0.8~5 個捉えられていると期待されています。しかし、太陽ニュートリノや他のバックグラウンドによる信号と超新星背景ニュートリノによる信号とを見分けるためには、新たな手法が必要となります。

超新星爆発ではすべての種類のニュートリノが生まれますが、そのうちスーパーカミオカンデで最も観測しやすいのは反電子ニュートリノです。反電子ニュートリノは、 陽子と反応して陽電子と中性子を発生します。陽電子は水中でチェレンコフ光を発するので、観測することができます。そこで、陽電子だけで なく、中性子による信号も水中でとらえることによって、反電子ニュートリノからの信号を他の現象と区別しようとしています。

超新星爆発からのニュートリノを検出するための新たな手法

超新星爆発からのニュートリノを検出するための新たな手法

中性子による信号をとらえるため、スーパーカミオカンデにガドリニウムという物質を0.1%程度の濃度で加えることを考えています。ガドリ ニウムは中性子を捕獲する確率が非常に大きく、かつ捕獲した後にチェレンコフ光を発生するエネルギーの高いガンマ線を放出するため、スーパーカミオカンデで検出することができます。

スーパーカミオカンデの超純水に0.1%だけガドリニウムを加えた場合、5年間のデータで4~20個の超新星背景ニュートリノの信号を世界で初めて検出できると考えています。

実証実験からSK-Gdへ

スーパーカミオカンデでは、太陽、大気、人工ニュートリノを使った精密ニュートリノ観測が常におこなわれているため、ガドリニウムを加えて も他の観測に影響を与えないことを確認しなければなりません。そのため、神岡鉱山内のスーパーカミオカンデ近くに新たな空洞を掘り、100トンクラスの” ミニスーパーカミオカンデ”ともいうべき試験用の水タンクを用いて、ガドリニウムを使用したニュートリノ検出器の実証実験を行っています。これまでに、ガドリニウム を加えても十分良い水の透過率 (70メートル以上) が保証されていることやタンクの構造体を腐食させたりしないことなどを検証しました。

2010年3月に実験装置を設置する新地下実験室が完成し、6月には200トンの試験用水タンクが完成しました。水の純化装置等建設が完了した後、水の循環試験を2011年1月〜2013年4月におこないました。 2013年8月、水タンクに光電子増倍管が取り付けられました。

ガドリニウム試験用実験装置

ガドリニウム試験用実験装置

その後、純水でデータ取得し、2014年11月からガドリニウムを3回に分けて目標の濃度になるまで段階的に加えてきました。2回目の投入で目標の半分の濃度に達し、水の透過率もスーパーカミオカンデと同程度であることが確認されました。2015年4月に3回目のガドリニウムを投入し、目標の濃度まで達成しました。これにより、2015年6月にスーパーカミオカンデ研究グループは、ガドリニウムを溶かすプロジェクトを『スーパーカミオカンデGd(SK-Gd)』として承認し、実現に向けて大きく動き出しました。

テスト用200トンタンクの内部

テスト用200トンタンクの内部

すでに、中性子線源を用いた検出器較正により、ガドリニウムによる中性子捕獲の後放出されるガンマ線の検出にも成功しています。今後、200トンタンク中でガドリニウム溶液の散乱⻑の測定や、ガドリニウム溶液中の放射性不純物測定により、水質の理解を進め、スーパーカミオカンデへガドリニウムを投入した際の影響をより詳細に調べていきます。また、実際にスーパーカミオカンデを改造するスケジュールは、現在実験中のT2Kと調整をしているところです。スーパーカミオカンデがスーパーカミオカンデGdに生まれ変わるま で、もう一歩のところまできています。

▶スーパーカミオカンデGdパンフレット [pdf]