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背景2

研究内容

太陽ニュートリノ

太陽ニュートリノとは

太陽は我々の身の回りで、最も強力なニュートリノ発生源です。太陽が輝くエネルギー源は、太陽中心部で起こる核融合反応によるものです。4つの水素原子核(つまり陽子)が融合して1つのヘリウム4原子核(陽子2つ、中性子2つ)が作られる際に核融合エネルギーが放出されますが、同時に2つの陽電子と2つの電子ニュートリノが生成されます。(4p → He + 2e+ + 2νe + 核融合エネルギー)この反応で生成される電子ニュートリノを「太陽ニュートリノ」と呼んでいます。 太陽ニュートリノの強度は、地球の位置で、毎秒1平方センチメートルあたり、約660億個になります。

太陽中心で起こった核融合反応による熱が太陽表面に現れるまで10万年ほどかかるといわれています。一方、ニュートリノは他の物質とほとんど反応しないので、太陽中心で生まれたニュートリノは地球までおよそ8分で到着します。つまり、光では10万年前の太陽の活動を見ていることになりますが、ニュートリノでは太陽中心の活動状況をほぼリアルタイムで観測することができるのです。

ニュートリノで見た太陽

ニュートリノで見た太陽。太陽を中心に配置する座標系を用いた。黄色い部分がその方向からの事象が多いことを示す。太陽方向からニュートリノが飛来していることが、カミオカンデ実験で初めて示された。(図はスーパーカミオカンデの観測データ)

太陽ニュートリノの数が足りない

太陽ニュートリノの観測は、1960年代後半からアメリカのR. DavisらによるHomestake実験で始まりました。 Homestake実験では、太陽ニュートリノが塩素原子核に衝突してアルゴン原子核に変わる反応率を調べる事で、ニュートリノ強度を観測しましたが、ニュートリノが飛来してくる方向を測定することはできませんでした。実験の結果、観測された反応率は、標準太陽模型(Standard Solar Model, SSM)から予想される値の約1/3程度でした。本当に太陽から来たニュートリノを捉えているのか、なぜニュートリノ強度が少ないのか、SSMは正しいのか、ニュートリノが有限質量を持ちニュートリノ振動現象が起こっているのか等の疑問がありました。この問題は「太陽ニュートリノ問題」として、長年にわたり研究者を悩ませることになります。

1988年に、Homestake実験以外の初めての太陽ニュートリノ観測結果が、カミオカンデII実験グループから報告されました。カミオカンデ実験はスーパーカミオカンデ実験の前身の実験で、ニュートリノ飛来方向をリアルタイムに検出できます。カミオカンデにより、観測されたニュートリノが太陽の方向から来ている事が初めて示されました。しかし、観測された太陽ニュートリノの強度はSSMで予想される値の約半分であり、太陽ニュートリノ問題の解決には至りませんでした。

太陽ニュートリノ問題の解決、さらなる疑問の解明へ

スーパーカミオカンデは、2000年6月にこれまでにない高い精度で太陽ニュートリノの強度の観測結果を報告しました。その結果、観測された太陽ニュートリノ強度はSSMで予想される強度の約45%であることを99.9%以上の確からしさで確認し、太陽ニュートリノ問題がニュートリノ振動によるものであることを示唆しました。さらに、非常に高い精度のニュートリノエネルギー分布の測定やニュートリノ強度の昼夜の時間による変化の情報を加えて、ニュートリノ振動を起こす原因となる、質量差、ニュートリノ同士の混ざり方(混合角と呼びます)に大きな制限を与え、ニュートリノ混合の割合が大きいことを示しました。2001年6月には、カナダのSNO実験での太陽ニュートリノ観測結果を合わせて、2つの実験データだけからニュートリノ振動が起こっているという確実な証拠が示されました。また、同時に標準太陽模型で計算されたニュートリノ強度も正しかったことが確認されました。

観測される太陽ニュートリノ強度が少なく見える問題はニュートリノ振動により解決しましたが、ニュートリノの性質や、太陽の燃焼機構(標準太陽模型)にはまだまだ疑問点が残されています。太陽ニュートリノの振動パラーメータ(質量差、混合角)の真の値、太陽ニュートリノに対する地球内部の物質効果の確認、太陽内部の化学的組成の解明、等が挙げられます。これらの疑問の解明に向けて、スーパーカミオカンデでは、より精密で高い統計精度の太陽ニュートリノ観測を続けています。