背景1
背景2

研究目的

陽子崩壊

全ての物質はたくさんの原子でできていて、原子は原子核とその周りを飛び交っている電子から成り立っています。さらに原子核は電気をもった陽子と電気をもたない中性子から作られています。中性子はわずかながら陽子より重たいので、壊れて陽子と電子とニュートリノ(ベーター崩壊)になりますが、陽子の仲間(バリオン)の中で陽子は最も軽いので、未来永劫壊れることなく安定していると考えられてきました。

しかし、本当にそうでしょうか?物質に働く4種類の力のうち、3つの力(電磁気力、弱い力、強い力)を統一的に説明する大統一理論は、陽子が他の種類(中間子や電子の仲間)のより軽い粒子へ壊れることを予言しています。最も有力な壊れ方の候補は、陽子がパイ0中間子と陽電子(電子の反粒子)に壊れるモードです。パイ0中間子は2つの光子にすぐ壊れるので、スーパーカミオカンデでは3つの電子型のリングが観測されます(図1)。もし陽子が壊れるとすると、宇宙の中の物質はいつかバラバラに壊れてしまうことになります。しかし、心配はいりません。予言される陽子の寿命は宇宙の年齢よりもはるかに長いのです。

図1:陽子が陽電子とパイ0中間子に崩壊する様子。

図1:陽子が陽電子とパイ0中間子に崩壊する様子。

では、そんな長い寿命をどうやって計るのでしょうか?粒子の寿命は、観測開始の時の粒子の個数に比べて、1/2.7に減った時間で定義されます。つまり、たくさんの陽子を集めてその中のいくつかが壊れれば、長い時間を待たなくても陽子の寿命を見積もることができるのです。スーパーカミオカンデの中には5万トンの純水が蓄えられていますが、この中には7x1033個の陽子が含まれています。このたくさんの陽子の中のどれかが壊れるかどうかを観測することによって、陽子の寿命を測定しているのです。

スーパーカミオカンデは1996年に運転を開始して以来、10年以上も観測を継続していますが、陽子が壊れた証拠はまだ得られていません。陽子が壊れなかったという観測結果から、陽子の寿命は少なくとも1034年以上(宇宙の年齢が1010年くらい)と推定されています。もし陽子崩壊が観測されれば、素粒子の大統一理論検証への突破口になります。スーパーカミオカンデでは、あらたな素粒子の世界の地平を目指し、観測を継続していきます。

動画で見る陽子崩壊